21話
「おぉぉ・・・流石王都、ギルドがこんなにデカイとは」
「本当ですねぇ。私達のいた町とは大違いです」
王都にあるギルドはセリーヌ達のいた町のギルドよりも5倍ほど大きかった。
構造は4階建てで、石造りでかなりシッカリと作られているようだった。
中に入るとすぐに受付があるのだが、依頼書を張るボードの数がかなり多かった。
入ってまっすぐ行けば受付、そこで右を向くと雑用系の依頼ボードが3個ほど。
一個のボードにだいたい10~15個は依頼が貼れる。
そして左は椅子や机などが置いてあり、数人の冒険者が話していた。
そのまま左の奥へいくと上の階への階段があった。
「おぉ・・・流石王都」
全員が驚きを隠せないまま上の階へと登った。
2階はどうやらアイテムショップのようだった。
値段を見てみると幾分か町の店よりも安い。ギルドだから値引きされているのだろうとわかった。
そして、店の左右にボードが並べてあり、右には討伐任務、左には護衛任務が張ってあった。
ボードは左右共に3個だった。
「ねぇねぇ!次行こう!もう一個上!」
そして、一人異常にテンションが高い。
「華奈恵・・・」
「カナエさん・・・」
蒼慈とセリーヌがそろってため息を吐く。
そんな2人を無視して華奈恵は上の階へと向かう。
蒼慈達を見ずにもう一人付いていく者が。
「フレールまであんなに目キラキラさせちゃって」
この中で最年少だが最も落ち着いている蒼慈だった。
「あの子ったら・・・」
3階は冒険者がくつろげる場所になっていた。
格安でご飯を食べることが出来るみたいだった。
その光景を見てまたもや目を輝かせる2人だった。
「次っ!次!」
子供のように次へ行こうとする華奈恵。
フレールも無言でそれに続こうとする。
「ちょっと、あんた達」
その時、その2人に声が掛かった。
「4階はA-ランク以上の者以外は立ち入り禁止だよ」
3階の受付にいるご飯の注文を受けている女性が言った。
「・・・」
固まる華奈恵。
華奈恵と蒼慈は今だにランクはE-のままだったからだ。
しかし、そんな華奈恵を無視して一人上に上がる者が。
「フレールってランクいくら?」
疑問に思い声を掛ける蒼慈。
「A-」
言ってから何故か親指を立てるフレール。
そして、そのフレールに親指を立て返す華奈恵。
「フレール・・・A-・・・」
受付の女性が何か考えるように呟く。
「あんた『閃光の戦姫』かい!?」
途端周りの冒険者がざわめきだす。
「そうよ。この人たち私のパーティーだから一緒に行ってもいいわよね?」
「いいけど・・・あんた今まで王都への招待全部断ってきたのにどういう風の吹きまわし?」
「まぁ・・・色々とあって・・・」
そう言って言葉を濁すフレール。
そんな彼女の横をズンズンと抜かしていく華奈恵。
「あっ!ちょっとカナエ待って!」
フレールはそれを追っていった。
「フレールって割と有名なんだな・・・」
ちょっとビックリする蒼慈だった。
「ねぇ、あんた」
「?」
頭にクエスチョンマークを浮かべながら自分を指さす蒼慈。
「そうよ、あんただよ。一体どうやって『閃光の戦姫』を落としたんだい?」
「落とした、って・・・人聞きの悪い。別にそういうんじゃありませんから」
「ふ~ん。まぁ、いいわ。さっき付いていったあの子とあんた等のランクは?」
「俺と華奈恵はどちらもE-です。そんで、セリーヌは・・・セリーヌってランクいくら?」
「私はCですよ」
「E-が二人にCが一人。とんだお荷物さんだね」
そういって馬鹿にしたような笑みを浮かべる受付の女性。
それに合わせて周りの冒険者達も笑う。
「ははは。そうですね。足引っ張りまくりですもん、フレールが」
そう言って4階へと登る蒼慈。
その背中に強がっちゃって、なんてと周りからの言葉が投げ掛けられたが、蒼慈はそれらを無視して4階への足を進めた。
「全く困ったもんだな・・・あんなかに俺らの魔力を見れる奴はいないのかよ・・・」
「魔力を見るにはよほどの力量が必要なんですよ。ランクなら最低でもAはなくちゃ」
「ふ~ん。そんなもんかなぇ・・・」
4階はA-ランク以上しか受けれない依頼があるボードが2つあった。
「ほぉ・・・」
そう言って周りを見渡す蒼慈。
ボードの前に立つ華奈恵とフレールは置いといて、周りの椅子に座って話している冒険者を見る。
ほとんどがフレール以上の力を持っている者だと思う。
そうやって蒼慈が他の冒険者を見ていると横から声が掛かった。
「あんたらここ来るの初めてか?」
「ん?そうですけど・・・」
かなりガッシリした体付きの男が蒼慈に声を掛けてきた。
「ここのルールを教えといてやるよ」
「ほぅ」
“ここのルール”この男はそう言ったが、たぶんその“ここ”が指すのは王都のことではなく、ましてやこのギルド全体のことではないのだろうと蒼慈は思った。
「“ここ”のルールですか・・・是非聞かせて貰いたいね」
“ここ”というのは多分、このフロアのこと、言うならA-以上のランクの冒険者間でのことだろう。
「ふっ・・・この世界は弱肉強食だ。それはわかるな?」
「もちろん」
「特に“ここ”では力が全てなんだよ。下手にA-になったからといって気軽に来て良い所じゃないんだよ、坊主」
「ほぅ・・・つまりは小手先の強さなら“ここ”には来るな、と?」
「あぁ、そういうことだ。ましてや1人だけがランクを満たしているからといって雑魚が付いてくるなんてのは、論外なんだよ」
「へぇ~。それはそれは、ご忠告どうも」
男は暗に蒼慈らに「ここはお前らが来る所じゃない」と言いたいのだろう。
男は蒼慈に対してかなり威圧的な目線を送っていることがその証拠だ。
しかし、蒼慈はそんなのをものともせず男の前を通ってボードへと歩いていく。
「フレール、華奈恵。なんか良い依頼あった?」
蒼慈がそう二人に聞くと周りから鋭い殺気が飛ぶ。
「早く出て行け」そう言ってるのだ。
「えっとね・・・これは?」
フレールはそんなものに慣れているのだろうか、なんの躊躇いもなくボードに貼り付けてある任務を指す。
「それが一番報酬がいいのよ」
華奈恵もフレールと同じ考えのようだった。
「へぇ・・・護衛任務か・・・面倒臭そうだな」
「でもさ、ほら。結構な額だよ?それにランクもSだし、ぎりぎり受けれるし」
「これ成功させたら私達一気にランクあがるよ?それに5金貨も貰えるなんて・・・」
フレール達はどうしてもこの依頼がいいらしい。
どこか諦めた様子で蒼慈はその依頼をボードからちぎった。
その時、
「おい、それは俺らが今から受けようとしてたとこなんだよ」
…あれ?なんかデジャブに近いものが・・・