13話
「まさか、蒼慈があんなに優しかったとはねぇ・・・」
「昨日がたまたまだったんだってば、普段はこんなもんさ」
「もしかして、蒼慈って本当にロリコン!?」
「ちげーよ。むしろ年上好きだ」
「ほほー?じゃあ私なんてどうなのかしら?」
からかうように華奈恵は蒼慈の前でポーズを取ってみせる。
「あぁ。かなり好みだ」
華奈恵の挑発に真顔で答える蒼慈。
「え?え?えぇ!?な、何!?告白!?」
顔を真っ赤にして、悶える華奈恵。
「別に告白なんてしてないってば。ただ好みであるってだけだし」
「いや!それもう告白じゃない!」
「・・・言っとくけど、見た目の話だからな?」
「見た目が一番重要なんじゃない!」
二人はあの後、メルという少女の父親が行方不明なったという山へと着ていた。
山はあまり木が生えてなく、岩が目立つような所だった。
「俺は中身が一番大事だと思うけど・・・」
「照れ隠しのつもり!?・・・なるほど、蒼慈は私に惚れているのね!」
かなり勘違いをしている華奈恵を放置して蒼慈はズンズンと山の上へと上っていく。
二人の力があれば山の頂上まで飛ぶことも可能だが、岩龍がどこに潜んでいるか、わからないため、しらみつぶしに下から地道に登っているのだ。
地道と言っても二人の山を登るスピードは尋常ではない。
この程度では疲れることがない二人はかなりの速度で頂上へと向かっていた。
「ふふふ。照れちゃって、もう!なんだかんだいってまだまだ子供ね!」
「・・・」
…あぁ~もう誤解解くのすら面倒だぁ~
「・・・ん?おい、華奈恵」
「何?何?ついに認めるの!?ちょ、ちょっと待ってね今心の準備す・・・」
「あの岩、おかしくないか?」
華奈恵の言葉を思いっきり遮る蒼慈。
「は?岩?今はそれどころじゃないでしょ?」
「いや、それどころだよ。あれ岩龍じゃね?」
そう言って蒼慈が指を差すのはなんの変哲もない岩。
しかし、よく見るとわずかながら魔力が洩れている。
「どう見たって岩じゃない。そんなことよりも今は・・・」
蒼慈は足元に落ちていた石を拾い、それに少々魔力を篭め、その岩に投げつける。
―――ガツン
岩の一角が吹っ飛ぶ。
「何してるの?いい加減にしないといくら私でも怒る・・・」
―――ガァァァァッァ!!
途端、周辺の岩が持ち上がり、あっと今に龍の姿へと変わる。
「ビンゴ」
呟く蒼慈。
岩龍は自分の鱗の一部をいきなり吹っ飛ばされたことに怒りを感じ、蒼慈へと敵意を向ける。
「華奈恵。ストレス発散するには良い相手だぞ」
蒼慈は自分に向けられた龍のものすごい威圧受け流し、華奈恵に喋りかけた。
「・・・」
「華奈恵?」
「なんでよ。今から告白タイムじゃないの?私だってまだまだ乙女なのよ?なんでこうなるの?」
華奈恵は蒼慈に聞こえないような小さな声でボソボソと文句を言う。
華奈恵は元の世界でモテなかったわけではない。
むしろかなりの人気があった。
しかし、彼女は“干渉”の能力の血筋であるがゆえに誰かと付き合うことは許されなかった。
もし、その彼氏が原因で“異世界”へ行くことを拒む、なんてことが万が一にもあっては困るからだ。
「だから、こっちに来たら、あとはもうやりたい放題だったのに・・・」
「どうしたんだ、華奈恵?」
「・・・なんでもないわ!!やってやろうじゃないの!」
「華奈恵?いきなりやる気出してどうし・・・」
「蒼慈!ちょっとどいててくれるかしら!?・・・それと後で話しがあるから!」
「え?あぁ。わかった・・・けど」
若干不安な蒼慈であった。
「いくわよ岩龍!絶対に許さないわ!」
華奈恵が駆けていく。
岩龍へと向かい、岩龍の手前で飛び上がる。
―――ガァァァァ!!
自らよりも高く上がった華奈恵に岩龍は岩を吐き出す。
「遅いわ!・・・出でよ、“風銃”!」
華奈恵は風を使って空中で移動し、その岩を避ける。
そして、華奈恵の手の内が光り、そこから風属性で形成された銃が現れる。
見た目はデザートイーグルのような女性には大きめのハンドガン。
ただし、色は白く、薄っすらと風を纏っているのがわかる。
華奈恵はその銃を岩龍へと向ける。
――――ガァァァァ!
岩龍は再び吼え、華奈恵を追うように空へと飛ぼうとし翼を広げる。
「させないわ!・・・くらいなさい!!」
華奈恵がトリガーを引く。
銃口から空気の固まりが圧縮され岩龍へと向かい、当たった瞬間弾ける。
―――グガァァァ!
苦しげな声を岩龍があげる。
続けて華奈恵はトリガーを引き続ける。
「あの場を邪魔した罪は、その命をもって償いさなさい!」
銃口から空気の圧縮されたものが飛び出し、岩龍へ当たる。
当たり、弾け、血しぶきが舞う。
岩の鱗が削れ、血肉までも吹き飛ばしていく。
「あぁぁぁぁぁ!」
これでもかというくらいに華奈恵はトリガーを引き続ける。
しばらくたち風を使いながら、ゆっくりと地上へと華奈恵が降りてくる
岩龍は完全に死んでいた。
翼はもげ、岩の鱗は粉々になり、体の部分部分が吹っ飛んだ状態だった。
ストンと華奈恵が蒼慈の真横に降り立つ。
「ふぅ。すっきりしたわ。やっぱりストレスを溜めちゃ駄目みたいね」
華奈恵はかなりすっきりした様子でそう言った。
蒼慈は思う。
…これはさすがに・・・
「やりすぎじゃね?」
「そう?それよりもどっかのロリコンが好きな少女の父親を探しに行きましょ」
スタスタと華奈恵は蒼慈の前を通り過ぎ、岩龍の体が宝石のような物を取り出した。
「これ。一応高価な物だから、取っときなさい」
華奈恵はそう言って蒼慈にそれを投げてよこすと、メルの父親を探しに岩龍がいた奥を探し始めた。
だんだんと雑になってきたかも・・・^^;