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Contract ~契約~  作者: 深々
第1章 契約者
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10話

 蒼慈と戦いフレールは負けた。

 あの時は強がって見せたけど、内心は怖くてたまらなかった。


「本当に私のことを殺そうとしてた・・・あれはそういう目だった」


 なのに突然彼は私に回復魔法をかけてどこかへ行った。


「私は致命傷だったわ・・・あの傷を一瞬で治すなんて、並みの治療師でも出来ることじゃない・・・」


 そう、確かに彼女は致命傷だった。

 肩からバッサリと切られ、血も出すぎていた。

 あの状態で普通のヒールをかけられてたところでは、血すら止まらないはずだ。

 なのに彼の魔法は彼女を一瞬で治してみせた。


「あの人なら・・・もしかしたら・・・」


 彼女は今、家に戻ってきていた。

 病気の姉をかかえて。


「・・・姉さん・・・」


 あの後すぐに彼女の姉は倒れ、全身に痛みを訴え始めた。

 彼女の病気は黒斑病と言い不治の病だ。

 フレールはギルドでは2位という、かなりの力がある。

 ランクにしてA-。

 あのギルドでの依頼なら彼女には出来ない依頼はほとんどない。


「強くたって・・・こんな、物を壊す力じゃ・・・」


 彼女の魔法は雷属性。

 使う武器はレイピアで、その組み合わせで彼女は絶大な威力と速さで幾戦もの戦いを戦い抜いてきた。


「でも・・・これじゃ姉さんは治せない・・・」


 いくらギルドで金を稼いでも意味がなかった。


「どうして・・・どうして・・・」


 何故不治の病なのか。

 どの薬師、医者、名高い治療師に見せても治せなかった。

 かといって遠くの都心へ行こうにも、途中で姉が苦しみだすのがわかっていた。

 今の姉は起きてから1時間ほどしか行動ができない。

 そんな姉を連れて旅などできなかった。


「姉さんは・・・私が守るんだ・・・」


 彼女らに親はいない。

 昔に二人を残してどこかへ行ってしまった。

 捨てられたのだ。

 今の彼女には姉しかいない。


「失いたくない・・・絶対に、何があっても・・・」


 気づけば居なくなっていた両親。

 あの時は本当に絶望した。

 自分達を捨ててあの人たちは何処へ行ったのか。

 そんな自分を支えてくれたのは姉だけ。

 でも自分は姉を救うことができない。


「この命にかえてでも守ってみせる」


 ふとフレールの頭に思い浮かぶ言葉。


『お前の姉を守るという思いはその程度か?』


 この程度じゃない。この程度でいいはずがない。


『立たないなら、お前の姉ごと殺すぞ。・・・弱いのは罪なんだよ。弱いから何も守れないんだよ。恨むなら、自分を恨め・・・』


 彼はそう言った。

 弱いのは罪だと。

 まるで彼が、彼自身に言ったようにも聞こえた。

 だから、何故か彼ならと思った。

 フレールの方から喧嘩を売ったも同然だった。

 あの時、フレールにはビッグボアの牙が必要だったのだ。

 もしかしたら姉に聞くかもしれないと、いつも診てもらっている医者が言ったのだ。

 だから、あの依頼書も一緒に受ければ一石二鳥だと思った、その矢先。


「文字すら読めない、ビッグボアすら知らない。それなのに、のほほんとしてて・・・」


 そう、嫉妬したのだ。

 自分がこんなに苦しんでいるのに、何故彼らはあんなにヘラヘラしているのか、気に食わなかったのだ。

 だから、つい喧嘩腰になった。

 元々フレールはプライドが高かった。

 それだけの力もあったし、それだけの功績を残してきた自信もあった。

 ここらへんでは誰もが彼女のことを知っている。

 

「なのに・・『アマ』ですって・・・」


 彼女のプライドはひどく傷つけられた。

 だから、懲らしめてやろうと思った。


「そしたら、逆に返り討ちにあうなんて・・・」


 彼女は対人戦では負けたことがなかった。

 なのに、あれはあっけなかった。

 本当に一撃。

 彼が剣を振ったのが見えなかった。


「・・・ほんと、情けないな・・・ははは」


 乾いた声が家に響く。

 くだらないプライドも無くなった。

 ただ、今は救いを求めることしか彼女の頭にはなかった。



 それからフレールは蒼慈達を探し始めた。

 この町はそれなりに広い。

 だけど、あれほどの騒ぎを起こしたのだからすぐに見つけられると思った。

 なのに、あの決闘のことを知っている人がほとんどいないことにフレールは驚きを隠せなかった。

 町中を走り回り彼を探した。

 彼女にとっては町中を走り回ることは大した苦労ではない。

 体に電撃を纏ってしまえば一瞬だ。

 それでも彼女はあの時、内心焦っていた。


…見つからない。何処。何処!何処に行ったの!


 もしかしたら町を出たのかもしれない。

 一瞬でどっかへ行ってしまったのかもしれない。

 そう思うと涙が出そうだった。

 そして、彼を見つけた時は心の底から安堵した。

 同時に涙も出そうだったけど、なんとか踏みとどまり彼を姉の元へ案内した。

 彼に頭を下げたときは、もう何も考えられなかった。

 ただ、涙が溢れた。どうしようもなくて、助けて欲しくて。

だんだんと更新速度が落ちてきていてすいません。

一日に一話を今は目標にしてます(汗)

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