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Contract ~契約~  作者: 深々
第1章 契約者
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7話

かなり序盤ですが、主人公暴走モードです。

「今なら、土下座して謝るなら許してやるけど、どうする?」


「それはこっちのセリフよ。本気で頭とばすから、遺言を言うなら今のうちよ」


 互いに引く気なんてサラサラなかった。


「武器くらい準備する時間くらい取ってもいいのよ?」


「武器?・・・あぁ、なるほど。ならお言葉に甘えさせてもらおうか、その鉄屑もらえる?」


 そう言って蒼慈はギルドの壁に積もった剣や鎧やらの残骸の一部をひっぱて来た。


「そんな鉄屑でなにするの?まさかそれを投げるつもり?」


 蒼慈を馬鹿にした態度でフレールは言う。

 蒼慈はそれを無視して、鉄屑を足元に置き、右手を水平に突き出し、手のひらを開く。


生成メイキング・“刀”!」


 蒼慈が刀を鉄屑から生成した瞬間、周りの空気が変わった。


「錬金術か!?あれは・・・」


「なんであんな小僧が錬金術なんて使えるんだ!?」


「詠唱もなし、その上陣も使ってないなんて・・・どういうことだ!?」


 急にざわつき出す野次馬。

 蒼慈は詠唱なしで、しかもこの歳で錬金術が使えることの重大さを知らない。

 周りの蒼慈への目線が変わってくる。

 命知らずの小僧から、畏怖の者を見る目線へと。


「あんた・・・一体何者?その歳で錬金術なんて聞いたことないわ」


 本来、錬金術は賢者のみが使えるとされた、一種の魔法。

 ただそれを行使するに当たっては魔力ではない、何か別の力が必要とされる。

 そして、その力は世界から受ける力だと考えられていたため、長年この世界に貢献して来た者のみが、

錬金術を使えるとされてきた。


「あんたの言葉を借りるなら、『糞餓鬼』だよ・・・準備はいいか?」


「・・・えぇ。いいわ。所詮その程度・・・名乗りなさい!」


 フレールは蒼慈にそう言い放ち、殺気を闘気へと変えた。

 それに習うように蒼慈も殺気から闘気へとまとうものを変える。


「名乗るならそっちからだろう?」


「私は・・・『閃光の戦姫』、フレール・ニルフェール!」


 そう言ってフレールはレイピアを構える。


「二つ名なんて俺にはないけど・・・蒼慈・神城!」


 蒼慈は刀を天に向かって突き上げ、腰を低く落とした体勢をとる。

 蒼慈には刀のことなんて知らないし、剣道をやっていたこともない。これはマンガの見よう見まねだ。

 自顕流、『蜻蛉トンボ構え』。


「それが、あなたの構え?・・・行くわよ?」


 フレールはレイピアを“突”の構えにする。


『我は雷。雷よ我を纏え。サンダーエンチャント!』


 唱えた瞬間フレールを電撃が纏いはじめ、全身が光りだした。

 『サンダーエンチャント』は全身に電撃を纏い、体の電気信号をより強めることで、速さと威力を上げる技だ。


「でた・・・フレールの『サンダーエンチャント』。こりゃ、流石に一撃だ・・・」


 野次馬の誰かがそうつぶやいた。

 皆固唾を呑んで二人を見守る。

 その中、蒼慈は魔法を使わず、ただ構えていた。


「一撃で決める・・・」


「それはこっちのセリフよ・・・」


 そして、二人の間を沈黙が占める。


―――ヒュッ


…誰よりも早く。閃光のごとく・・・


…誰よりも早く、強く、この一撃に全てを・・・


 同時。


―――ガキンッ


 二人の元いたところの調度中間地点で鉄がぶつかり合う音がした。

 共に一撃必殺の技。

 二人は交差した。

 そして、何秒か経ったのち、


―――ブシュッ


 フレールの肩から鮮血がほとばしる。

 そして、カクンとフレールは膝をついた。


「・・・『閃光』も大したことないな。パワーがたんねぇよ」


 蒼慈のつぶやきだけがこの空間の中に取り残された。

 そして、群集が騒ぎ始める。


「あの『閃光の戦姫』が負けたぞ!」


「あの小僧、一体何者なんだ!?」


 その中蒼慈へと向かっていく人影があった。華奈恵だ。


「蒼慈・・・やりすぎよ。これは致命傷よ」


 そう言って華奈恵が指差した先には血溜まりに倒れるフレールの姿があった。


「頭をふっ飛ばさなかっただけマシじゃないの?」


 はははと笑いながら蒼慈はフレールへと近づいていく。


「これは決闘。これは|試合(殺し合い)だ。死ぬ覚悟はできてるだろ?敗者には・・・死を」


 そう言って蒼慈は刀を振り上げる。


「ま、まってください!!」


 蒼慈とフレールの間に割り込んできた影があった。

 その女性はフレールと同じ金髪に青い目。

 ただ、肌が無駄に白い。そして、ところどころに黒い斑点が見られる。


「蒼慈・・・彼女はたぶんフレールの姉よ。フレールが死ぬと彼女が困るわ。勝負はもうついたでしょ?」


 華奈恵は蒼慈に刀を納めるように促す。


「・・・フレール。立てよ。まだ生きてるだろ?・・・それともお前の姉を守るという思いはその程度か?」


「ちょっ。蒼慈!何を言ってるの!?彼女は今にも死にそうなのよ!治療を早くしなきゃ、それどころじゃっ・・・」


「・・・な・ん・・だと・・・?」


 血溜まりに倒れていたフレールが顔をわずかに上げ、口から血を吐きながらしゃべる。


「立たないなら、お前の姉ごと殺すぞ。・・・弱いのは罪なんだよ。弱いから何も守れないんだよ。恨むなら、自分を恨め・・・」


 そう言って蒼慈はもおう一度刀を振り上げ、フレールに止めを刺すように振り下ろした。

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