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憑依されて世界を救おうとしていましたが、体を取り戻したのでとりあえず世界を壊そうと思います

掲載日:2026/01/25

「随分舐めた真似をしてくれたなぁ」


そう言って俺は田中を踏みつけた。

あぁ、なんてことをしてくれるんだ。俺はこんなことしたくないのに。


「自分でわかってんだろ? 何をしたのか」


俺はそう凄んで舌打ちをした。

あぁ、やめてくれ。確かに田中は俺のゲームを借りパクしたよ。

でもな、俺だって田中から借りた500円踏み倒してんだぞ。気まずいだろこんなん。

俺、もうどういう顔していいかわかんねぇよ。


しかし俺は止まらない。田中の顔スレスレに拳を叩きつけ、次やったら分かってるだろうな、と脅しをかけていた。


おい、そういうのは500円返してない奴が言うセリフじゃねぇからな!

しかし俺の声は俺には届かない。それもそのはず俺の体は知らない誰かに乗っ取られてしまったのだ。


ごめんな田中、俺が不甲斐ないばっかりに。

いつかこの体を取り返したら500円も返すしなんかラーメンとか奢るから許してくれ……。


そう誓った俺だったが、そのいつかは来ることはなかった。


……なんか俺、とんでもねぇことしてんだけど!?


わかんねぇ、がちでわかんねぇ。

なんか知らんけど超能力を使って超能力持った仲間をたくさん集めて、神? なんか創造神? ってやつに戦いを挑んでいた。

あまりにも超展開すぎてふわっとしかわからない。


創造神って何だよ、テスト前くらいしか頼らない都合のいい存在扱いしてたから本当に神がいるの気まずいって。


いや、そもそも何で俺そんな超能力持ってんだ?

はぁ、創造神が能力を与えて戦わせて人類を選別してる? なんでそんなこと……進化の前段階の選別? へぇそうなんだ。

それで平穏な世界を取り戻すために創造神を倒す?

はぁ、それは大層なことを……そんな大層なことを俺が!?


人の体で何てことしてくれてるんだ。

しかもお前、何しれっと仲間にケイ様って呼ばせてんだよ。恥ずかしいだろそんなん。

しかもそれ表記 K 様だろ。とんでもねぇよお前。

こちとらずっと身内にはけーちゃん、けーくんで通ってきたし、友達だって神田かケイだったぞ?

K 様てお前、母さんにどう説明する気だよ。

久々に友達家に呼んだと思ったら息子が友達全員から K 様なんて呼ばれてたら変なグレ方したのかしら? なんて不安にさせちゃうだろ!

俺は親孝行ガチ勢なんだからな!


……それになんか仲間って感じでもない気がするんだよな。

みんな敬語だし仲間のこと手下とか言ってるし、どっちかというと支配してるって感じ?

俺、本当はそんなんじゃないよ。ラブアンドピースで世界平和を願う善良な一般市民なんだよ。

だからそんな怯えた目で見ないでくれ!俺の良心がジクジク痛むんだよ……。


しかしそんな俺の声は誰にも届かない。

恥ずかしい、気まずい、そんな泣き言を言ってる間にも奴はどんどん前進していく。

創造神なんてどうやって会うんだよ、そこら辺に住んでてお宅訪問すれば会えるってんならわかるけどそういうのでもないんだろ?

出来んのかよ〜と茶々を入れていたが、なんと奴はその方法を知っていたようで気がついたら創造神との戦いの一歩手前というところまで来ていた。

おいおい、どこでそんな知識仕入れてきたんだ? なんて聞いたがやはり俺の言葉は聞こえないようだった。


「お前たちはここまでだ。足手纏いは必要ない」


奴が仲間に向かってそう言い放った時も俺は誰にも届かないフォローを続けていた。


そんなことないよぉ、みんなすっごい頑張ってるしミウが回復してくれたおかげでここまで大きい怪我なくこれたんだよぅ。

それにショウだって的確にサポートしてくれたからさっきだって魔法?なんかビュッてやつ当たんなくて済んだんだよぅ……。

それにそれに……。

俺が一人一人にそんなことないよ、みんな足手纏いじゃないよ、と弁明を続けている最中だと言うのに奴は歩き始めていた。


みんな怖さからか不甲斐なさからか口をギュッと結んで下を向いている。

俺こういう気まずい空気苦手なんだよなぁ……。


ひんひん泣きながら気まずいよぅと泣き言を言っていると、奴は天を睨みながら息を吸い込んだ。


「……犠牲になるのは、俺だけでいい」


奴がボソッと呟いたそれを俺は聞き逃さなかった。全くお前って奴は〜!!


もう気分はお兄ちゃんだ。

結局手下だなんだって言ってたけど、ちょっとコミュニケーションが苦手なだけで大切な仲間だと思ってたんだな!

自分を犠牲にして守りたい仲間がいるなんて、最初の友達に対するとんでいない態度を見ていた身としては随分と成長したんだなと感動してしまう。

よしよし、兄ちゃんがついててやるからな〜、まぁ何にもできねぇけど。

ガハハ、と笑っていると奴が不機嫌そうに言った。


「誰が兄ちゃんだ」


!?!?

お前聞こえてんのか!?


「……ずっと聞こえている。お前少しは黙れないのか」


おいおい、嘘だろ!?

お前今までどんな気持ちでいたんだよ!


「……そりゃ、世界を救うためには犠牲の一つやふた……」


お前、仲間に K 様って呼ばせてんのいじられてる時どんな気分だったんだよ!?


「……」


おい拗ねんなって。

そこから奴は機嫌を損ねたのか何を呼びかけても返してくれなくなってしまった。

創造神? らしきものと話してる時も長ったらしいしあんまり面白くなかったからけーちゃん?けーくん?と呼びかけていたのにフル無視だ。

K 様〜と呼びかけた時だけ少し不機嫌そうになったから聞こえてはいるはずなんだけどなぁ。

そうこうしている間に話は終わったようだった。

ずっと無視していたくせに、奴は少し笑って俺に話しかけた。


「返すよ、主人公」


お前何言ってんの? 

返すってんならまず田中に500円返せよな。あれから田中となんか気まずい感じになっちゃったじゃん。

ていうか主人公って何だよ。K 様呼びから薄々気づいてたけどお前結構拗らせてるタイプだろ。


ちょっとからかってやろうとしたが、それは叶わなかった。

視界がぐるぐると回り出し、いや、これは世界が回っている? ぐちゃぐちゃになった世界が黒く塗りつぶされていく。


「俺はこの世界が好きなんだ、もちろん主人公のお前もな。だから異物はいらない。これでいいんだ」


なーに言ってんだお前? そう言った気がしたが伝わったかわからない。

そのうち思考も出来なくなり全てが無になった感覚があった。


……そして今。

目の前には田中がいる。


「500円返します。あとラーメン奢ります」

「? あ、あぁ。何で敬語なんだ?」


気がついたら俺は奴に憑依される前に戻っていたようだった。

ここから始まる小説って読みたいとか思いますか???

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