第5話 藤宮凛は同じシフトにさせたい
球技大会の熱気が冷めてから、数週間が過ぎた。
期末テストが終わり、夏休み直前の生徒会室は、いつもより少しゆったりした空気だった。
今日は夏休み中の生徒会活動スケジュールの確認日。文化祭はまだ先だが、夏のイベントとしてプール開放や補習の監督が決まっている。
メンバー全員が集まり、資料を広げている。
一ノ瀬がアイスコーヒーを飲みながら、いつもの明るさで切り出す。
「会長、夏休みも生徒会活動あるけど……デートとか入れちゃえば? 副会長と二人で補習監督とか、絶対いい雰囲気なるよ!」
佐藤がソファにふんぞり返って大笑い。
「だな! プール開放の監視も、会長と副会長でペアにしたら、水着姿で……おっと、想像しただけでヤバいぜ」
神崎がスマホを弄りながら、凛を見てニヤリ。
「凛ちゃん、水着どんなの持ってるの? 会長に見せたいやつ、あるんでしょ~」
凛が資料をめくりながら、クールに返す。
「……水着の話は関係ないわ。監視は公平に割り振る」
でも、耳が少し赤い。視線が俺にチラリと来る。
(……夏休みに二人きりで監視とか、想像しただけでドキドキする。凛の水着姿、ちょっと気になるな)
(……プールで天城くんと一緒なんて、考えただけで恥ずかしい。でも、好きだから、ちょっと期待しちゃう)
互いの目が合って、すぐに逸らす。
俺は話題を戻すふりをして。
「補習監督はローテーションでいいだろ。プール開放も、みんなで交代」
一ノ瀬が手を叩いて。
「じゃあ会長と副会長は同じシフトにしちゃおう! 絶対誰も文句言わないよ~」
佐藤と神崎が「おおー!」と乗っかる。
「却下」
俺と凛が同時に言って、周りが爆笑。
でも、凛が小声で俺にだけ。
「……同じシフトでも、いいけど」
(……今、OK出した? 凛のこういうところ、可愛いな)
(……言っちゃった。もっと一緒にいたい気持ちが、漏れちゃう)
俺は平静を装って。
「じゃあ、決まりだな」
周りがまたどよめいて、笑いが広がる。この茶化しはいつも通り軽くて、心地いい。
スケジュールが決まって、他の三人が帰った後。
生徒会室に二人きり。
夏の陽射しが窓から差し込んで、部屋が少し暑い。
「……夏休み、長いわね」
凛が椅子に座ったまま、静かに言う。
「ああ。でも、生徒会活動あるから、会えるだろ」
俺が隣に座ると、凛が視線を上げる。
「プール監視の時……ちゃんと、監視するわよ」
(……水着の凛、見れるのか。好きで、楽しみだ)
(……天城くんとプールで一緒。好きで、ドキドキするのに)
凛がわずかに口角を上げる。
「……天城くんは、私から言わせたいんでしょ?」
直球。
「……藤宮副会長こそ、俺から言わせたいんだろ?」
互いに軽く笑う。
今日も、「付き合ってください」は言わなかった。
でも、夏休みが、少し特別に感じる。
絶対に、俺から言わない。
藤宮凛から、必ず言わせてやる。
部屋を出る時、廊下で軽く指が触れた。
二人とも、何も言わず歩く。
でも、その小さな触れ合いが、夏の始まりを予感させた。




