第20話 藤宮凛はプレゼントを渡させたい
修学旅行から帰ってきて、数日後の生徒会室。
旅行の報告書をまとめながら、メンバー全員が集まっていた。
一ノ瀬が写真をスマホで見せながら。
「修学旅行、めっちゃ楽しかった~! 会長と副会長のグループ、ほとんど二人きりだったよね?」
佐藤がニヤニヤ。
「だな。京都でデートみたいじゃん。旅行中に『付き合ってください』って言っちゃったかと思ったぜ」
神崎がくすくす笑いながら。
「凛ちゃん、会長と竹林散策とかロマンチックすぎ。絶対何かあったでしょ?」
凛が報告書をめくりながら、クールに。
「……何もなかったわ。グループ行動よ」
でも、視線が俺にチラリ。
(……旅行で天城くんと二人きりみたいだった。あの景色見て、手繋ぎたかったのに……はあ、付き合ってくださいって言っちゃいたい……あー、もう言っちゃおうかな……いやいや! 言ったら負けだわ! しっかりしなさい、藤宮凛!)
俺は内心でニヤリ。
(……旅行で凛と一緒、最高だった。言いそうになったけど、耐えた。次はもっと攻めて、言わせる)
ここで、ふと記憶が遡る。
――三ヶ月前、生徒会入りたての頃。
初めて二人きりになった生徒会室。
凛が資料をまとめながら、俺を見て。
「……天城くん、努力家よね。私も、完璧じゃないと嫌なタイプだけど」
俺が返す。
「藤宮副会長こそ、財閥のお嬢様で完璧すぎる。尊敬するよ」
互いに視線が絡み、沈黙。
凛が少し赤くなって。
「……好き、かも」
俺も。
「……俺も、好きだ」
好きは素直に言えた。あの時は、ただの好意を認めただけ。
でも、そこからプライドが邪魔した。
凛が意地っ張りに。
「……でも、付き合ってくださいなんて、言いたくないわ。言った方が負けよ」
俺も負けじと。
「……ああ。言った方が負けだ。相手から言わせてやる」
そうして、ルールが生まれた。
好きは言えたのに、「付き合ってください」は最後の砦になった。
プライドが高すぎて、負けたくない。完璧主義だから、頭を下げたくない。
でも、本当は――ただ、素直になりたくないだけ。好きすぎて、負けたらどうしようって怖いだけ。
記憶から戻る。
現在、報告書まとめ中。
俺がわざと提案。
「旅行の写真、みんなで共有しよう。藤宮の浴衣姿、いい写真あったよな」
凛の目が泳ぐ。
「……別に、共有しなくていいわよ」
(……写真共有で俺を動揺させようとしてる。逆に、凛から旅行の思い出話させれば勝ちだ)
澪が凛の横で小声で。
「凛様、相手の誘導ですわ。思い出話で攻め返しましょう」
凛が少し意地悪く。
「……天城くん、旅行の思い出で一番よかったの、何?」
俺がドキッとして。
「……凛と一緒だった時間、かな」
凛の頰が赤くなる。
「……ふん。私も……似たようなものよ」
(……思い出話で甘くなっちゃった。言いそう……はあ、イチャイチャしたい……あー、もう言っちゃおうかな……いや、耐えなきゃ!)
その時、部屋の外で。
学園の別カップルが旅行の写真を見せ合いながら。
男子が女子に突然。
「旅行の思い出でわかった。付き合おう」
女子が「うん……付き合う!」って答えると、男子が優しく手を握って額キス。
メンバーたちが窓から見てどよめく。
一ノ瀬が「きゃー! 思い出話額キス!」
俺の内心。
(……思い出話から額キスで決めちゃうのか。ロマンチックだけど……俺にはできるわけねーじゃん。そんなタイミング、凛に作れないよ)
凛の内心。
(……思い出話に額キス……すごいわね。私だって天城くんと旅行思い出話したら、喜んで付き合うのに……はあ、イチャイチャしたい……あー、もう言っちゃおうかな……いやいや! 言ったら負けよ! しっかりしなさい、藤宮凛!)
報告書まとめが終わり、二人きり。
「……旅行、いい思い出になったわね」
凛が少し照れくさそうに。
「ああ。また、どこか行きたいな」
俺が返すと、凛が目を細めて。
「……ふん。機会があればね」
(……また一緒にって、言っちゃった。次こそ、相手から言わせるわ)
(……凛とまた旅行。言いそうになるけど、耐える)
本日の勝敗
メイン:引き分け
サブ:別カップルの勝利(思い出話額キス作戦)
だから、天才たちは今日も楽しく意地を張り続ける。




