舞踏会での公開処刑 2
大広間は数秒の間、深い静寂に包まれた。
そして、その静寂は、貴族たちが吐き出す軽蔑と嘲笑のざわめきによってゆっくりと破られていった。
レティシアは、ユージンの告白に最高の喜びを感じ、何も考えられなかった。
一方のユージンは既に騎士としての『名誉ある死』を選んだかのように静かにその汚名を受けていた。
貴族たちは、平民騎士の図々しさと、それを見過ごす陛下の寵愛に憤っている。
レティシアは歓喜に顔を輝かせて、ドレスの裾を気にすることなく前へ出た。
「ユージン……。」
彼女は感極まった様子でユージンに手を差し伸べた。
「貴方は本当に『私の騎士』だわ。ええ、受け入れます。貴方の『不敬の愛』を。そして貴方を。」
その瞬間、ざわめきが再び静寂に変わった。姫が公然とこの不敬を受け入れた事実は、『彼の王権に対する明確な挑戦』を意味していた。
レティシアはユージンを立たせて、その頬に軽く触れた。
ユージンはもう何も感じなかった。彼は目的を果たした。これで、彼が王権に泥を塗った騎士として追放または此処で弾劾を受ける準備が整ったのだ。
その時、王座から皇帝オーギュスト陛下の冷たく低い声が響き渡った。
「大儀であった……。」
陛下はユージンとレティシアを一瞥した。その表情は無表情だが、瞳の奥は氷のように冷たい。
陛下は重厚な、しかし感情のない声で貴賓客たちに向かって口を開いた。
「どうやら、我が王宮の騎士は、少々情熱が過剰であったようだ。余興のつもりであろう。しかし、今宵の興はこれからだ。」
そして陛下は周囲の貴族たちを見渡し、王としての威厳を持って告げる。
「引き続き、楽しまれよ。」
陛下は騒動の当事者であるレティシアとユージンを見て、そして護衛のガストンに目線一つで従うよう命じた。
「レティシア姫様、ユージン、陛下に付き従え。」
陛下はレティシアとユージンを左右に伴い護衛騎士ガストンを連れて公然と大広間から退場した。
貴賓客たちは、陛下のこの行いに驚いて再びどよめきがおこった。
━━ 陛下はこの場で二人を罰することなく容認し、事態を秘匿するつもりなのだ。
貴族たちの不満はつのる一方だったが、この陛下の計らいにより、彼らの公式の場での弾劾は一歩遅れることとなった。




