軍神の帰還と義父の背中
王宮の重厚な門を開けて、ユージンは外の世界の空気に触れた。
張りつめていた黄金のオーラが霧散し、盾と剣も消えていく。
そこに立っていたのはボロボロのシャツを着た、酷く顔色の悪い一人の若者だった。
「ユージン」
(……あ、義父…。)
視界がぐらりと揺れる。緊張の糸が切れ、「血の力」急激に退いていく。
霞む視界の先、石畳からこちらに向かう影。
ユージンは、その胸に飛び込むように崩れ落ちた。
アルベールは、その震える腕で、息子を抱き止める。かつては命令一つで戦場へ送り出さねばならなかった
『王宮の騎士』が、今はただの疲れ果てた我が子として腕の中にいる。
「……やり遂げたな。ユージン。……よくやった。」
「……へへっ……。……言ってやったよ……。あのバカ親子……。二度と、来んな……って。」
本当は、議会の周りを王宮騎士団精鋭100、アルベールは民間の養成所の騎士を50、モラン諜報部隊30を会場外に配置させていたのだが、ユージンは全部一人でロザリンドの部隊や貴族たちを壊滅させてしまったのだった。
ユージンの言葉を聞いた瞬間、アルベールは天を仰いだ。息子を王宮という地獄に売り渡してしまったのではないか。『軍神の呪い』にあいつの人生を奪わせてしまったのではないか。
その恐怖が、ユージンの誇らしい一言ですべて消し飛んだ。
「……ああ、そうだ。お前は俺の、最高の自慢の息子だ……!」
アルベールは、赤子をあやすようにユージンを抱きしめ、枯れた声を絞り出して泣いた。
王宮を捨て、血の宿命をあざ笑い、平民の息子として帰ってきたユージン。その重みだけがアルベールにとって唯一の真実だった。




