幸せの光の玉
レティシア王女は知っている。
民を助けるための『戦闘服』は敵の目をくらませるためにきらびやかな服でなければならない。
レティシア王女は知っている。
民を助けるために必要なものは『勇気の石』それに『光の金貨』だということも。
そして彼女は固く信じこんでいる。
寡黙で厳格な騎士ユージンこそがレティシア王女だけの『秘密の王子様』であり、民の困窮を救う『魔法の使い手』であるということを。
彼女のこの珍妙な知識は全て、子供の頃から慣れ親しんだ絵本や古めかしい騎士物語、そして彼女を陰で嘲笑する侍女頭ロザリンドが悪意を持って語る作り話だけであった。
そんな中、彼女は今また、新しいミッションに取り組もうとしている。
『美しい光の玉』を探すこと。
彼女が幼い頃に読んだ絵本のクライマックス部。王子様とお姫様が結ばれようとする場面に、二人の手のひらの上に燦然と光る、それはそれは美しい『光の玉』が輝いていたのだ。
(真実の愛を実らせるには、その『光の玉』が必要なのね。)
当然のごとくロザリンドが悪知恵を付ける。
「姫様、その美しい『光の玉』というのが何処で作られているかご存じですか?」
使用人らしからぬ、馬鹿にしたような言い回し。しかしレティシア王女は何の疑いもせずにロザリンドの話に飛びつく。
傍らで黙って聞いているのはユージン。
数奇な運命で順風満帆とはいかない幼少期を送ってきた彼は、ロザリンドが信用に値しない使用人だという事を既に見抜いていた。
しかし公的な立場では、彼女を非難したり排除する権限はない。
胃痛はなかなか収まる気配はない。
「『真実の愛』とは、世俗性の高いどこにでもある、ありふれたもので作られるのです。」
「まあ、そうなの?……じゃあまた、探しに行かないと……ね。」
レティシア王女は興味津々だ。
「お待ちください。」
ユージンがついに口をはさんだ。
「前回のビスケット騒動で、姫は陛下から私は皇室上層部から叱責を受けたばかりです。」
「『光の玉』よ。これは私たちの試練です。」
お花畑頭のレティシア王女との会話は、ユージンの苦痛以外何物でもない。
ロザリンドは、二人を馬鹿にしたように笑っている。
「もう、巻き込まないでください。陛下には『もう二度と奇妙な行動は取らせるな。』と仰せになられました。」
「これは、愛の試練よ。私と貴方は、この試練に挑まなければならないの。貴方は私の『秘密の王子様』なんだから。」
「姫、私は『秘密の王子様』ではありません!ただの護衛騎士なのです。このままでは本当に、私の給与が止まります!」
ユージンは流石に涙目になってきた。
姫の暴走は止まらない。
「愛があれば、お金なんていらないわ。心を燃やしなさい!」
(心より先に胃のほうが燃えそうだ。)
レティシア王女の決意はゆるがないのであった。
書いてて笑いがこみ上げます。かわいそうなユージン




