ロザリンドの野望
ユージンとレティシアが王宮内で『バカップル』として公然と振る舞いを始めた数日後。
侍女頭ロザリンドの私室は暗く思い空気に包まれていた。苛立ちは隠せない。
彼女の机にはレティシア姫とユージン騎士の『不謹慎な逢瀬』を詳細にした報告書が置かれている。
(馬鹿げている!あの姫め、騎士との密会を隠すどころか逆に公然と軽薄に振る舞うとは…!これが愛だとでも?ただの世間知らずの末娘の気まぐれに過ぎん。)
ロザリンドの狙いは、レティシアを王位に不適格な『醜聞の姫』としておとしめ、病弱な彼女の兄フィリップ王子を擁立することだったのだ。
しかし、レティシアの大胆な『バカップル』戦略は、ロザリンドが期待したような静かな醜聞ではなく、
『姫の純粋な愛』という公然の話題となってしまい、国民の関心と批判が混在する形で受け止められた。
(このままでは、陛下が優柔不断な裁定を下し、時間を稼がれてしまう。もう待てぬ。私自身が動かねば。)
ロザリンドは、王宮の腐敗した現状を憂い、自分が摂政になることで国を救うという、歪んだ大儀に燃えていた。彼女にとって、レティシアもオーギュスト陛下も、その野望を阻む障害でしかなかったのだ。
その日の深夜、ロザリンドは地味な外套をみにまとい、王宮の秘密の抜け道を通って外に出た。
彼女の目的地は、王と郊外にある強力な反国王派の貴族が所有する別邸であった。
彼女の目的は、摂政就任とフィリップ王子擁立のための最終的な密約を結びにきたのだった。
別邸の地下室には、王権に不満を持つ重鎮貴族たちが秘密裏に集まっていた。
「侍女頭。姫のスキャンダルは『愛の物語』として広がり、思ったより効果がないではないか!我々の計画を前倒しにする必要があるのでは?」
「その通り。陛下の病状(嘘)は公に流布済みです。我々の最終目標は王位そのものではなく、実権の掌握すること。病弱で頼りないフィリップ王子を公の場に出し、『摂政』を立てるという大義名分を確立するのです。」
ロザリンドは計画を続けた。
「私は、王宮内部から陛下の不適格を宣言するための署名を、王室評議会メンバーから集めます。貴方たちは、経済的な圧力と軍事的な示威行為で、王都を揺さぶる準備を整えて下さい。来月、すべてを終わらせましょう。」
ロザリンドは、貴族たちがフィリップ王子を操るための『道具』として、彼女を見ていることを知っていた。しかしロザリンドは自分が最も賢く、最終的には全ての権力を手中に収めると信じていたのだ。
(愚かな貴族どもめ。フィリップを王位につけさえすれば、私が摂政として実権を握る。お前たちの私腹を肥やすための政治は終わりだ。この国を腐敗から救うのはこの私よ!)
ただの恋愛話が……違う方向に(笑)




