静かなる騎士の勝利
レティシアが騎士ユージンの前で『愛の盾』となった騒動は、瞬く間に王宮中に広まった。
ロザリンドはこの滑稽な光景を『愛におぼれて公私を混同するバカップルの戯れ』と断じて、レティシアの公務に対する嫌がらせを強化した。
レティシアの公務中の休憩時間に、わざとユージンの耳元で聞こえるようにロザリンドは悪態を吐く。
「レティシア姫様、貴方が私室で見せた振る舞いは、すでに陛下の耳にも入っております。愛する男に恥をかかせてまで守ろうとするとは、哀れだとしか思えませんわ。早く目をお覚まし下さいな。」
「ロザリンド!私の愛を愚かだというのは、貴方だけの狭い考えにとらわれているからよ。私はこの騎士が隣にいる時こそ、王族としてその使命を見出しているの。貴女の言う事はもう聞かない!」
この間まで泣き崩れていた姫が、強いまなざしでロザリンドを睨みつけた。
レティシアの公然の犯行に、ロザリンドの顔は激しくひきつった。
「なんですって!その口を慎みなさい。貴女は完全にその男に操られているのです……。ああ、お気のどくに。」
ロザリンドが感情的にユージンに罰を与えようとした瞬間、彼は一歩前へ出た。そしてロザリンドには目もくれず、ただレティシアに対して一礼して『騎士としての忠誠』を述べた。
「姫様、私の高潔さを信じていただき、心より感謝申し上げます。姫様の国民に対するこの愛こそ、この王国に必要な光です。私は『姫様の愛を傷つける、如何なる者』も許しません。」
この言葉は、表面上は、姫の愛を隠れ蓑にした騎士のセリフだが、ユージンにとってはロザリンドに対する宣戦布告でもあったのだった。ロザリンドは怒りのあまり声も出ない。
「……っ!」
ロザリンドは、騎士の規律を盾に公然と姫の愛を肯定するこの若造を感情的には排除したいものの、陛下の前で騎士道に反する罰を与えることは出来ず、屈辱を飲み込むしかなかったのだった。
自分にとっては久しぶりの長編になりつつあります。




