ちっちゃな妖精は、一緒に寝ませんからね
読みに来てくださって、ありがとうございます。
団長さんのミミへの猫っ可愛がりが、止まりません。
「さあ、おいでミミ」
え!?私、団長さんと一緒のベッドで寝るの?冗談よね?
「団長。いくらなんでも、ミミと一緒のベッドで眠るのは、ちょっと問題が、あります」
そうそう、ドラニスタ君の言う通り。
「流石にベッドは用意出来ませんでしたが、聖女様から、ミミのベッドとして籠を預かってます。ジェシカ達が、布団も枕も全部、仕立ててくれました。
大体、同じ部屋で寝ると言うのも、既に問題があると思います」
寝る時は、聖女様のお部屋でも良いと思う。まあ、私の今のサイズでは、一緒の部屋で寝ても、問題ないとは思うけど。
「いや、何かあったら、どうするんだ?ネズミに引っ張っていかれるとか、虫に襲われるとか」
え!?それは、絶対、嫌かも。
「ここより、聖女様の部屋の方が、安心だと思いますが」
「いや、私の側が一番安全だ」
『安心』と『安全』では、微妙に意味が違うと思う。
「お前だって、最初の頃は、危険だからって、私の部屋で一緒に寝ていただろう?騎士や兵士の中には、危ないやつもいるからな。ミミを苛めるやつもいるかもしれん」
それも、かなり嫌かも。私、ちっちゃいからな。攻撃も、今は静電気とか低周波位しか出来ないしね。安全第一ですね。
「ミミ、少しでも何かあったら、大声出して下さいね。私の部屋は、隣ですので。それから、こちらの箱には、着替えが、入っています」
「色々ありがとう、ドラニスタ君」
私がお礼を言うと、ちょっと照れながら、ドラニスタ君は部屋を出ていった。
色々あって疲れた私は、団長さんがお風呂に入っている間に、夜着に着替えて、籠のベッドで、眠ってしまった。
寝る子は育つので、たっぷり寝たら、大きくなるかもしれない。
よく眠った私が、朝起きて最初に見たのは、団長さんの顔だった。イケメンは、寝顔も様になるらしい。あれ?私の籠ベッドは、何処に行ったんだろう。
私は、団長さんの手のひらの上で慌てて飛び起きた。
「やあ、おはようミミ。よく眠れたかい?ほら、髪が乱れているよ」
団長さんの指が、私の髪を優しく撫で付けた。ちょっと、気持ちいい。
「昨夜は、やっぱり心配だったからね。ミミを私の手のひらに乗せて、寝たんだよ。神聖力も貯まったんじゃないかな」
うん。確かに、神聖力もちょっと増えている気がする。ダルかった身体も、今朝はスッキリしている。
でも、団長さんてば、過保護過ぎかも。
「だって、心配だったからね。もし万が一何かあってからじゃあ、遅いからね」
ノックと共に、ドラニスタ君が部屋に入ってきた。手に洗面器とタオルを持っているが、私が団長さんの手のひらに乗っているのを見ると、途端にドラニスタ君の機嫌が悪くなった。
「あれだけ、一緒に寝ちゃダメですって、言いましたよね?」
団長さんは、そっぽを向いて、知らん顔。これじゃあ、どっちが大人か判りゃあしない。
何だか、団長さんって子供みたいで、ちょっと可愛いかも。
流石にトイレは、聖女様の部屋でお借りした。1人で使うには危ないし、こればっかりは、団長さんに手伝って貰うのは、絶対に嫌。
「何だ。言ってくれたら、手伝うのに」
変態っぽい発言は、禁止します。団長さん。絶対に嫌だからね。
朝食は、皆揃って食堂で。料理長さんは、すっかり元気になっていた。
「今日は、ミミちゃんに昨日教えて貰ったそば粉のガレットを作ってみたよ。明日は、カボチャのパンケーキに、しようかな」
元気になって、良かった良かった。たまには、おしゃれな朝食も、いいよね。毎日は、大変だけれど。
食後には、砦の中庭へ。そこで、畑を作ってるんだって。
「まあ、この地域は雨も少なくて、あまり作物を作るには向いてないらしくて。野菜があまり手に入らなくて。なるべく自給自足してるんだよ」
うーん。力もちょっと戻ったし、お手伝いしますか。
「では、一宿一飯のお礼です。団長さんは、このまま軒下にいて下さいね」
『さあ、雨雲よおいで。恵みの雨よ、降っておくれ』
雷神様は、雨の神様。恵みの雨は、大地を濡らし、雷を轟かせる。
育ちの悪かった畑の野菜は、にょきにょきと伸び、輝かんばかりの実をたわわに結んだ。今日は、出血大サービス。
「やあ、ミミは凄いな」
団長さんは、私をポケットから出して手のひらに乗せ、頬擦りしてキスをした。
だから、それは、止めてって言ってるでしょ?
「髭は、ちゃんと剃ったんだぞ」
「うおっ!野菜がしっかり実って旨そうだな」
「あれ?トマトなんか植えてたっけ?」
「キュウリやナスも、植えてなかったんだが」
大地の女神様も、大盤振る舞いですかね?