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ちっちゃな妖精、料理長に同情する

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 妖精さん、おばちゃん達にどんどん遭遇中です。



 ジェシカおばさん達が、私の服を作ってくれている間に、私は聖女様と色んな話をした。異世界から来た事、離れ離れになってしまった妹がいる事。何故か、時々、女神様の声まで聞こえた。

 女神様曰く、風神様と雷神様は、現在、異世界に旅行中らしい。

 この世界の風神様と雷神様は、2神とも、色んな世界で、そこの神様とその世界のお酒を呑むのが大好きで、時折、異世界に旅行に行ってしまうのだ。

 そんな酔っ払った上での異世界土産が、私と妹だったりするんで、文句は、言えない。ありがたや、ありがたや。

 まあ、ノリは、酔っ払って、家に、看板とか、店の前に置いてある人形とか持って帰っちゃったりするおっちゃんと一緒だけどね。


 とにかくまあ、私、しばらく、このサイズのままらしい。


 「しばらくこちらに、居たらいいんじゃない」


 そう、聖女様が仰るので、この砦にご厄介になる事になった。

 そして、聖女様が持つ神聖力を神力の代わりに少しいただく事になった。女神様曰く、この神聖力が身体に満ちれば、私の身体のサイズも元に戻るらしい。

 ただし、聖女様は、お年なので、最近は神聖力が、あまり身体に貯まらなくなってしまったそうな。


「だからね、うちの甥っ子に神聖力を分けて貰うしか、ないわね」


 はい?団長さんから、ですか?


「うちの甥っ子、あれでね、一応、いっぱしの聖者なのよ」


 団長さんは、神聖力を使って、魔物を倒しているらしいです。へぇ~。何か、スゴい人だったんですね。ちっちゃな生き物に擦り擦りするのが好きな、変な人では、なかったのね。

 イケメンは、伊達では、なかったか。


「だから、甥っ子のポケットに入ってると、神聖力も自然と貯まるわよ」


 聖女様は、そう言ってニッコリ微笑んだ。


 あ、だから、私、ちょっと復活してるんだ。しばらく団長さんのポケットに入ってたもんね。


 聖女様を見てると、死んでしまったお祖母ちゃんを、思い出す。両親が亡くなってしまった私と妹を、育ててくれたお祖母ちゃん。心筋梗塞で倒れて、そのまま帰らぬ人となった。

 葬儀も終わって、ボンヤリ生きてたら、コンビニ出たとこで事故に遭って、姉妹もろとも死んでしまうとは、せっかく育ててくれたお祖母ちゃんに申し訳ない。

 まあ、お祖母ちゃんが買ってくれた風神様と雷神様のスタジャンを見た神様達に、こうして私達を拾っていただけましたが。


「お礼と言っては何ですが、皆さんにマッサージしますね。お祖母ちゃんに、いつもしてあげてたんで、得意なんです!」


 今の私は、雷神様のお陰で電気魔法が得意なのだ。人間低周波マッサージ機、稼働します。任せて下さい。




 さて、仕事も終わって聖女様の部屋に私を迎えに来た団長さんは、ルンタタ、ルンタタと、私をポケットに入れて、上機嫌で、何処かに向かっていた。


「いや~、ちょっと調理場で問題が発生してね。憂鬱だったんだが、ミミがここにいてくれるだけで、何だか気分も高揚してきたよ。問題は、解決してないけど、ね」


 そう言って、団長さんは、ポケットの上から私に軽く触れた。


「どうしたんですか?」


「いや、ちょっと料理長がね」


 扉を開けると、大っきな男の人が、小さな椅子の上で、小さく丸まって座っていた。


「あ、団長さん。どうしましょう。私ら、ご飯だけは炊いといたんですけど、料理長が、こんなんなってて、晩御飯のおかずが出来てないんですわ」


 3人のおばちゃん達が、困った顔して、私達に走り寄ってきた。

 

「やあ、ヤス。どうしたんだ?」


「団長、わし、もうムリですわ。足を怪我して兵士を引退したわしを、団長が拾ってくれて、早10年と3ヶ月と12日。料理助手から駆け上がって料理長となりやしたが、疲れやした。

 毎日毎日、作るのは、同じ様な料理ばかり。いい加減、新しい料理が作りたいのに、思い浮かばねえ。

 わし、ちょっと旅に出て、新しい料理を習って来ます」


 団長さんは、料理長のヤスさんの肩をバンバン叩き、背中を撫でてあげた。


「何、言ってる。お前、義足なんだから、1人旅なんて無理だろう」


 団長さんは、そう言うけれど、毎日毎日お料理を作ってると、たまにはウンザリする日も、あるのだよ。うんうん。


「うん。料理長さん。今日は、思いきって、手抜きにしてしまいましょう!」


 異世界旅行が好きな風神様と雷神様のせいか、この世界には、醤油も味噌も有るのだよ。嬉しいね。


 お肉と玉ねぎで肉丼作って、トッピングを色々用意して、牛丼屋スタイルで、行こう。

 味噌汁には、色んな野菜をぶち込んで。


「おいおい、そんなに色々ぶち込んだら、何の味噌汁か、判りゃあしねえ」


 とんでもないものを入れなきゃ、大丈夫。大丈夫。


「まあ、確かに色んな野菜は、とれるわな」


「後は、私らでやっとくから、料理長は、今日はゆっくりしな~」


 そう言うおばちゃん達も、毎日、ご苦労様で~す。


 おばちゃん達は、私には牛丼の具を細かく刻んでくれてミニ牛丼にしてくれた。お手数、おかけします。


 私は、料理長と色んな創作料理の話をし始めた。お祖母ちゃんの代わりに、時々、ネットで調べて料理を作ってたからね。


「へぇ~、世界には、色んな料理があるもんだね。うちじゃあ、こんな料理を作ってるんだが……」


 料理長は、料理の話をし始めたら、止まらなくなってしまった。

 本当に、料理が好きなんだね。






「そう言えば、団長。今回は、何を退治したんで?」


「ドラゴンだ。肉は、明日、到着するからな」


「とりあえず、ステーキですかね。後は、何にするかな~」





 時々、お料理するのが、嫌になる日も、あるよね。手抜き料理の日、大事です。

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