ちっちゃな妖精、お人形遊びに付き合う
読みに来て下さって、ありがとうございます。
今回は、おばちゃんパワー炸裂です。
「1人で風呂に入って溺れたら、どうする。私が手伝って」
「ジェシカ、浴室に連れて行ってあげて。私は、もうちょっと、このトチ狂った男を何とかするから」
とんでもない事を言い出す団長さんを、聖女様が止めてくれた。
危ない危ない、危ないわー。あの、イケメン団長。いい人なんだけど、ちょっとばっかし、過保護過ぎるかも知れない。そして、ヤバい気がする。
私は、ジェシカさんというおばさんの手の平に乗せられ、お風呂に行った。
「大丈夫?私が側に付いてますからね。小さい人専用の物がなくて不便でしょうけど、お手伝いしてあげますからね」
確かに、今の私のこのサイズでは、石鹸は1人で持てないし、瓶の中にあるシャンプーも出せやしない。
「せめて、お人形用の物があればいいんだけど、ここには小さな女の子は居なくてね」
ジェシカさんに手伝って貰い、私はお風呂を済ませた。バスタオルは、私が1人で使えるように、ジェシカさんがハサミで切ってくれた。
「貴族のお嬢様じゃない私らからしたら、他人に身体を洗って貰うなんて恥ずかしくって、仕方ないからね。あんたも、ひょっとしたら、そうなんじゃないかと思って」
そうなんですよー。どうしようかと思いました。
「まあ、レオン坊っちゃまも、悪気があったんじゃないんですよ。ただ、昔から、小鳥やらリスやらの小さい動物や、小さな可愛いぬいぐるみやらが、やたらとお好きで。
まあ、いい年して、さっきのアレは、ないと思うんてすけどね。何をトチ狂ってんだか」
そう言いながら、ジェシカさんは、キレイに洗ってある手巾を私に手渡してくれた。
「取り敢えず、身体にこれを巻いておきなさいな。もうそろそろ。裁縫係が来てくれるからね。ブラシが大き過ぎて髪は1人でとけないだろうから、私がといてあげる」
ジェシカさんは、クスクス笑いながら、お人形遊びをしているようで楽しいわー。と私の髪をといてくれた。
楽しんでいただけて、何よりです。
聖女様の元に戻ると、小さな布をいっぱい抱え、可愛いバブーシュカを着けたおばあさんが、いた。
「あら、キレイになったわね。マリン、この子が、妖精のミミちゃんよ。この子の服を、急いで作って欲しいの。下着も全部。男共がここに戻ってくる前に、素早くお願い。
大丈夫よ、ミミ。男共に、金輪際、貴女の肌は拝ませないから。まったく、うちの甥や外孫達ときたら、この子を裸のまま持ち歩いてたんですって」
「はあっ!?昨今は、紳士って言葉は、何処に行ったんですかね、聖女様。まったく、とんでもない。こんな小さな可愛いお嬢さんに、何て事をするのやら。
私は、レオン坊っちゃんだけは、そんな事をしますまいと思ってたんですが。とんだメガネ違いってやつですわね。
よござんす。私にお任せ下さい。メイドのドリスタにも手伝わせて、下着に夜着から舞踏会のドレスまで、超高速で仕立ててお見せしましょう」
いや、舞踏会のドレスって、いつ着るんだか。
聖女様は聖女様で、私の着れなくなったドレスからレースを、とか、細かい宝石は、あったかしら?って。
身体中のサイズを測るために、再び裸にひんむかれた私は、何だか目が回りそうになっていた。
「お人形遊びみたいで、何だか楽しいわね」
聖女様が、嬉しそうに、ニコニコ笑って呟いた。
あはははは。やはり、そう来ましたか。
「あ、でも、私、パワーが元に戻ったら、人間サイズに戻るので。せっかくたくさん作っていただいても、着れなくなってしまいます。申し訳ないので、必要最低限で、お願いします」
「「「あら、その時は、人間サイズで、また作るから、大丈夫よっ」」」
2度も楽しめるわ~と、かえっておば様方に喜ばれてしまった。
何かもう、ありがとうございます?
「さて、ミミ。こちらにおいで」
ジェシカさん、マリンさんにドリスタさんまで加わって、私の服を縫って頂いている中、私は聖女様の側にいた。
私が聖女様の手の平に乗ると、聖女様は私の額に人差し指を付けて、目を閉じた。
私の身体の中に、温かい力が流れ込んで、グルグルと回った。
「ああ、女神様の力では無く、他の神様の力が貴女の身体の中を巡っているわね。但し、本の少ししか残って無いようだけど。大地に恵みの雨が降るのが見えるわ。力強いパワー。男神様ね。
ああ、雷神様の御使いの方でしたか」
へへ、バイトですけど。
「おい、ドラニスタ。この書類、捌いても捌いても、終わらないんだが」
「まあ、増えてますからね」
「はあ?何で増えてるんだ?」
「聖女様が『どうせ、この後、仕事にならなさそうだから、早め早めに余分にやらしておいて』と、仰ってました。ミミは、今、聖女様とメイド達に囲まれてる様です」
「叔母上~。謀ったな~。ミミを独り占めする気だな~!」
「とっとと終わらせたら、ミミに会えますよ。今、服を作って貰ってるそうです」
「……ああ、どんな服が似合うだろう。レースがいっぱい付いたブルーのドレスなんてどうだろう」
「何気に、自分の目の色のドレスを着せないで下さい」
早くも、独占欲全開で、突っ走り気味のレオンハルトでした。