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ちっちゃな可愛い妖精さんは、幸運の女神

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 今回は、辺境騎士団長レオンハルトの視点です。



    辺境騎士団長レオンハルト side



 国王になった兄上に辺境に飛ばされて、早13年。今年は、兄上の第一王子までもが、ここに飛ばされた。

 いくら、王妃が死んで、側妃が王妃に繰り上がったとは言え、前王妃の息子の第一王子を辺境に飛ばすか?しかも、まだ13歳だぞ。王立学園の卒業まで、後3年待てなかったのか?

 私にだって、卒業まで追い出すのを待っていてくれたじゃないか。

 この子が生まれたから、後継ぎとして不要だと追い出されたんだが、結局、この子も追い出される羽目になるとはな。


 ここは、魔獣最前線。スタンピードこそは無いものの、時折、今日みたいな大物もやって来る。


「くそー、龍みたいな大物、どうやって倒せって言うんです?団長」


「やるしか、ないだろう」


 家畜を貪り食い、家屋を蹂躙して焼き払い、暴れまわる龍を何とか地上に足留めする事は、出来た。私の身体強化も、魔術師達の攻撃魔法も限界が近づいて来ている。

 どうすれば、いい?


 突然、一陣の突風が吹いた。


 ドーンと言う鈍い音と共に、何かが龍にぶつかって、龍が倒れた。

 脳震盪か?


「うぉー!何か知らんが、助かったぞ。今の内に、止めをさすぞ!一斉に、かかれっ」


 気絶しているなら、こっちのもんだ。今だ。全力で仕留めるぞ。


 止めを刺した私が座り込んでいると、皆の間をポーションを配って回っていた甥のドラニスタが、声を上げた。


「団長ー!よ、妖精が落ちてます」


 ドラニスタは、それを拾って私の手のひらに乗せた。


「これは、これは。何と可愛いらしい。小さな妖精だ」


 私は、あまりの可愛さに妖精に頬擦りしてしまった。

 だって、疲れてたんだよ。来る日も、来る日も、むさい男共に囲まれてさ。料理人もメイドも聖女も、いい年した既婚者の婆さんばっかでさ。

 部下は休みの日に花街に行けても、王弟の私がそう言う所に行けばスキャンダル扱いだし。


 おまけに、私は、可愛いものが、大好きだ。


 もう、声を大にして叫びたい。


『この妖精、ちっちゃくて、むちゃくちゃ可愛過ぎる!』


 何故、妖精が飛んできて龍にぶつかったのかは、謎だが。起きたらゆっくり話を聞こう。


 それまでは取り敢えず、胸ポケットに入れておくか。誰かに持っていかれても困るしな。何処かに、行ってしまっても困るじゃないか。ましてや、迷子になったらどうする?踏まれたら大変だしな。


 胸ポケットをそっと触れると、暖かさが伝わってくる。ちゃんと、ここにいる。あの可愛い妖精が、ここに眠ってる。裸で、ここに。


 ちょっと、様子を見た方がいいかもしれない。


 ほら、怪我でもしてたら大変だしな。


「団長、水をもらってきたんで手と顔を洗って下さい。泥だらけですよ」


 血が付いてないだけマシだろう?まあ、可愛い妖精も来たしな。ついでに無精髭も、剃っておくか。


「そうやって、普段から身綺麗にしておけば、顔も良いんだから、女の人にもモテるんじゃないですかね」


「いや、モテるったって、砦のおばちゃん達にか?ばあちゃん達に至っては、孫にしか見えてないからな」


「今みたいに、男共に『うぉー!流石、団長。格好いい!』とか、言われてモテてるよりは、マシですよ。

 ところで、妖精さんは、どうしたんですか?」


「ここ。胸ポケットの中」


 私は、胸ポケットの上から、そっと妖精に触れた。


「そんな恋人を抱きしめるような顔をしてないで、

 妖精が窒息したら可哀想なので、とっとと、そこから出してやって下さい!」


 おや、これは珍しい。今まで感情を一切、表に出さなかったドラニスタが、怒っている。これは、良い徴候だ。実の父親に、ここに捨てられた事について、ようやく吹っ切れたのか?

 これも、妖精のお陰かな。龍の事と言い、ドラニスタの事と言い、妖精さんは幸運の女神かもしれない。


 私は、妖精を起こさないように、そっと摘まんでポケットから出して、テーブルの上に横たえた。つもりだったが、彼女は、ゆっくりと目を開けた。

 ちっちゃな目で、私をじっと見つめている。


「やあ、目を覚ましたんだね。可愛い妖精さん」


 ああ、可愛いな。食べてしまいたいくらい可愛い。身体を縮込ませて、ぷるぷると震えている。

 再び、手で掬い上げて髪を撫でようとしたら、手の平が顔に飛んできた。


「それ以上、この子に近づくんじゃない。この変態が」


 ドラニスタが、私の顔に手を当て、私を押し戻していた。


「怖がっています。後、この子は、裸なんですよ。節度を保って、く・だ・さ・い」


 いやー、そうなんだけどね。あんまりにも可愛くて、ずっと見ていたいんだよ。胸を隠してる手も震える肩も。黒い髪も。小さくてよく判らないけど、瞳は何色なんだろう。


「と、とりあえず。何か着るもの下さい!布でもいいので!」


 鈴を転がすような妖精の声に、慌てて自分の身体中を叩いて手巾を探したが、何処に行ったんだろう、ないな。

 ドラニスタが、サッと手巾を取り出して、妖精の身体に掛けてやっていた。

 妖精は、ドラニスタに礼を言いながら、手巾をくるくると身体に巻き付け、胸の辺りで留めていた。


 残念。もうちょっと眺めていたかったんだが。




「団長、妖精は、気がつきましたか?」


「団長、妖精さん見せてください」


「団長、妖精の女の子、独り占めはズルいっすよ」


「団長、ひげ剃って妖精にいい所見せてんじゃないスよ」


「団長、可愛い妖精、俺も見たいです」


「お前ら、可愛い妖精さんに近づくんじゃない!妖精さんは、私のだ。ほら、妖精のお嬢さん。危ないから私のポケットに入っているんだよ」


「叔父上、いや、団長!妖精が窒息しないように、頭だけは、出しておいてあげて下さいね」


(何ここ~、髭ダルマ軍団の巣なの?)





 まあ、身だしなみって、忙しいと、面倒臭くてサボりがちになっちゃいますよね。特に、格好つける相手がいないと、こんなもんでしょうか。


連載中の『元魔王な令嬢は、てるてるぼうずを作る』の方も、読みに来てくださると嬉しいです。


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