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ちっちゃくない妖精、慌てる

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 ミミ、復活です。



 起きたら、すぐ側に団長さんの顔があった。でも、何か、おかしい。団長さんが、私を抱き寄せて、目を細める。


「スゴく、いい夢を見てるな」


 そう言って、私の胸に顔を埋めた団長さんは、顔を左右に振って。


「団長さん!これ、夢じゃありませんから~!!」


 いや~!ちょっと、ちょっと退いてったら!


「叔父上、見損ないました!」


 ドアを勢いよく開けて、ドラニスタ君は、持っていた洗面器の水を団長さんに吹っ掛けた。


「せっかく、いい夢見てるんだから、放っておいてくれ」


 水に濡れながら起き上がっても、団長さんは私を離そうとせず、私の顔に頬擦りし始めた。

 痛い~。朝の団長さんの髭は、ザリザリして、痛い。

 ゴンッ!て言う音がして、団長さんが縮こまった。


「聖女様直伝の、聖魔法付き正義の鉄拳です。目が覚めましたか?

 って、あれ?……ミミ?」


 寝ている間に大きくなってしまった私は、服が破けて残骸になってしまったので、濡れたお布団に包まった。隣では、何故か上半身裸の団長さんが、頭を抱えて踞ってた。


「はい~。ミミです~」


 泣いても、良いですか?大きくなった途端にこの騒ぎ。取り敢えず、何か着るもの下さい~。



 騒ぎを聞き付けた他の団員に、ジェシカさんを呼んできてくれる様に伝えたドラニスタ君は、私の肩に自分の上着を引っかけ、『私は、ここを絶対に動きませんらね』と言う表情で、自分の胸の前で腕を組んで、踞る団長さんを睨み続けていた。

 慌ててやって来たジェシカさんは、すぐに戻って、お仕着せを持ってきてくれた。

 ありがとうございます~。しくしく。


 ドラニスタ君は、上半身裸の団長さんを、ベッドの上から、とおっと転がして床に落とした。


「ち、ちょっと待った。ドラニスタ、私は、ミミに手を出してないから」


「自分は半裸の上、裸のミミの胸に、顔をグリグリ擦り付けたのは、誰ですか?何処の躾の悪い犬ですか?」


 団長さんの背中に足を乗せたドラニスタ君は、冷たい目をして、団長さんの顔を覗き込んだ。


「いや、ちょっと、頭ん中、整理させてくれ。ドラニスタ。私が上半身裸なのは、多分、昨晩酔っていたから夜着を着忘れたんだと、思う」


「いいから、取り敢えず、全員、部屋を出ていって下さい!」


 ジェシカさんの一言で、ドラニスタ君は、団長さんを蹴飛ばし、クローゼットから団長さんの服を引っ張り出して、団長さんを部屋の外に追い出した。



 お仕着せを着た私は、聖女様の部屋にジェシカさんに連れて行かれた。


「あら、人間サイズになったのね。良かったわ~。でも、レオンハルトには、物理的なお説教が、必要よね」


 聖女様は、そう言って、部屋に入ってきた私を抱き締めてくれた。

 まあ、でも、あれは、団長さんも寝惚けていただけなので、不可抗力かも。

 聖女様と朝ごはんを食べていると、団長さんがやって来た。


「その、ミミ。今朝は、すまなかった。本当に、申し訳ない。その、逃げるわけでは、ないんだが、魔狼の群れが国境近くに現れた。私は、今から討伐に向かう。ミミ、帰ってきたら話があるから、叔母上と待っていてくれ」


 このまま、団長さんを行かせてしまうと、もう、会えないかもしれない。神聖力が貯まった私は、雷神様が帰り次第、お掃除の仕事に戻るのだ。


「団長さん、騎士服を貸して下さい。共に、行きます。半数の団員が休みから戻ってきてないんでしょう?」


「危険だから、待っていてくれ、ミミ」


 団長さんの焦った顔が見える。私は、団長さんの顔を見つめた。後、どれくらい、この人と一緒にいれるんだろうか。少しでも、本の少しでも、一緒にいよう。


「ミミ……?」


「聖女様、行かせて下さい。大丈夫です。これが、本来の私の仕事なんです」


 まだ私の本来の力は戻ってないけれど、多少の戦力には、なる筈。



 騎士見習いの服を借りた私は、団長さんやドラニスタ君、他の団員達と共に馬に乗り、魔狼の群れが現れた村に向かった。馬に乗れない私は、団長さんの後ろに乗せて貰った。

 村の住人は避難したが、家畜達の殆どは食い荒らされていた。魔狼達は夜行性の為、普段はこんな時間に現れる事は、ない。良くない兆候だ。

 雷神様風神様不在の上、魔獣お掃除係の私達が無力化されていた為、ここいらの魔力が活性化している。スタンピードが、近いかもしれない。


 私は、不安になりながらも、魔狼の一匹に雷を落とした。団長さんは群れのボスと戦い、団員達は、2人一組で一匹の魔狼と戦っている。


 せめて、妹の美央と合流できれば。美央は、私の雷神の衣を預かってくれているだろうか。








「お姉ちゃん、何処に行ったんだろう」


「美央、また、その上着を見ているのか?」


「はい、殿下。姉の事が心配なんです。殿下のお陰で私の力はコントロール出来ていますが、姉は」


「姉君が何処にいるのかは判らないが、こうして魔獣退治をしつつ、しらみ潰しに探索していこう。いつかは、会えるかもしれない」





 2人が合流出来るまで、あと、少し。次回で恐らく最終話と、なります。

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