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ちっちゃな妖精、団長さんを送り出す

 読みに来て下さって、ありがとうございます。


 今回は、ミミの妹の美央の話が少し出てきます。



 団長さんは、時々、訳のわからない事を言う。


 『ちっちゃくて可愛い』これは、OK。うんうん。ちっちゃいは、可愛いよね。


 『私とミミの愛の巣』……これは、何ですかね?何を考えてるんでしょうか、このイケメンさんは。


 『ちっちゃいペット』うん、納得。『ちっちゃい恋人』ヤバい発想です。封印しとこう。


 朝早く起きてしまって、団長さんの手のひらの上で、団長さんの寝ててもイケメンな顔を眺めながら、そんな事を思ってた。

 はぁぁ。



 一夜が開けて、今朝、滞りもなく辺境伯と孫娘達は、帰って行った。孫娘達は、こっちを、じーっと、凄い形相で睨んでた。白い毛玉犬は、綱を付けられ、早々に世話係に連れられて馬車に入れられてた。

 ちょっと残念。


 そして、その日の団長さんは、執務室で、ひたすら書類仕事をしていた。


「ああ、ミミの妹さんに関する報告が来ているな。が、隣国にて、彼女に該当する情報は、掴めていないらしい。残念だな。だが、他の仕事のついでに、引き続き情報を集めてくれるそうだ」


 美央、何処に行っちゃったんだろう。大丈夫かな。女騎士さんは、無事だったんだろうか。


「隣国の他の主な情報としては、『王宮にて、第二王子が、新しい側近の12歳くらいの風使いの美少年を寵愛している。密偵には、美少年を送るのが得策』って、子供を密偵にして送れ、と言うのか?冗談じゃない」


 おや?風使い?12歳位?少年?


「団長さん、そこの所もっと詳しく」


「ミミは、美少年が好きなのか?」


「いえ、うちの妹は16歳ですけど、男の子に間違えられる事が、しょっちゅうで。美央は、風神様のお仕事をしていますので、風使いですね」


 団長さんは、考え深げに私を見た。


「いや、いくらなんでも、ミミの妹だからな。男の子には、見えないだろう」


 いえ、見えるらしいです。ショートカットでちょっと小柄な妹は、何故か小学校の高学年の男の子に、よく間違えられる。

 高校生なのに、これじゃあね。と、ちょっとお化粧をしてみても、美少年と間違えられて、声をかけられ、勝手に写真を撮られる始末。高校の学園祭のミスター・ミスコンテストでは、何故か特別に美少年枠を設けられて、特別賞をいただく有り様。


 そんな妹が、王宮で男として王子様に寵愛。一体、何をしてるのか?妹よ。

 で、姉の私は、ペットとして辺境騎士団長に飼われている。どっちもどっちだな。うん。


「まあ、この件は、要調査だな。さて、私は、ちょっと席を外すから、副団長、ミミを頼む」


 団長さんは、私を机の上に置いて、そそくさと部屋を出た。俗に言う、おトイレです。

 副団長さんは、細身で背の高い、眼鏡を掛けている男の人だ。団長さんが現場を抜けた後に指揮をとったり、書類作成を手伝ったりする。

 そして、よく、私を睨んでくる。小心者の私には何かちょっと怖い感じの人なので、私は、机の上に拡げられた隣国に関する調書を読んでいた。


「お前、字は読めるのか?」


「はい、読めます」


 私は副団長を見上げ、しかめっ面をした副団長の問いに答えた。


「ふむ。地図は、わかるか?」


「大体は。団長さんに、ここの場所と、私が皆さんに遭遇した場所、私が飛んできた方向を教えてもらいました」


「じゃあ、大丈夫だな。で、お前は、いつ出て行くんだ?」


 え!?これは、早く出て行けと言う事なの?それとも、ただ単に聞いているだけ?

 副団長さんをじっと見つめてみるが、真意が掴めない。


「ハッキリ言って、団長は、王弟殿下で、辺境騎士団長で、あの容姿だ。とにかく、女にもてる。いい加減、結婚しなきゃいけない歳だ。

 だが、お前が来てから、皆と町に飲みにも行かないので、町の女達との交流もない。昨日の様にせっかく令嬢が来ても、お前が追い返してしまった。

 我々は、団長には、結婚して子供を作って、この地に根付いてもらいたいんだ。聖女様もお年だし、もし、団長や聖女様が亡くなってしまったら、残された我らは、誰を頼れば良い?」


 副団長さんは、私を睨みながら、とつとつと私に話をした。まあ、一理ある。

 団長さんは、30歳だ。この世界では、結婚適齢期が早い。20歳で、子供を何人も持っていても、おかしくない。団長さんは、いい加減、結婚して子供を持たなきゃならないよね。

 まあ、昨日の様な令嬢は、ご勘弁だろうけど。団長さんは、私に向かって『愛の巣』とか言ってる場合じゃないのよね。


「今日は、団の半数の団員が町に繰り出す日だ。町には、花街もある。花街って、わかるか?団長は、お前がいるから町に出ないと言う。

 お前から、団長に町に出る様に言ってくれ。頼む」


 ああ、そうなんだ。そうだよね。いつまでも、ここに居るわけには、いかない。


「わかった。私から、団長さんに、町に出るように言っとく」


「恩に着る。すまない」


 副団長さんは、私に頭を下げた。

 そんな事、しなくていいのに。


「それから、私がここを出るのは、もうちょっと待って欲しいの。もう少ししたら、神聖力が貯まって、身体の大きさが元の人間サイズに戻るから。そうしたら、出て行くわ」


 私が、そう言うと、副団長さんは、大きく目を見開いて口を開け、ビックリした様な顔になった。


「は、はあ!?」


 そのままの状態で、私達は、見つめ合った。

 副団長さんが身動きしないので、私は、うんうん頷いて、ニッコリ笑っておいた。


「ミミ、ただいま~。おい、どうした副団長」


 トイレから帰ってきた団長さんと、書類を抱えて部屋に入ってきたドラニスタ君を見回し、副団長は、何故か口をパクパクして、私を見た。

 ああ、任してちょうだい。ちゃんと、団長さんに言いますってば。


「団長さん、副団長さんが、今日は一緒に町に飲みに行きたいんだって。私、聖女様とお喋りしてお留守番してるから、行ってらっしゃいね~」


 私は、そう言うと副団長さんにニッコリ笑って、再びウンウン頷いて、親指を立てておいた。グッジョブ、私。後は、副団長さんが、頑張ってね。

 何故か、副団長さんは、青い顔をしていた。


「でも、ミミ。……ほら、叔母上は、早寝早起きだから、すぐに眠ってしまうよ」


 団長さんは、焦った様子で、私を手のひらに乗せて言った。


「大丈夫ですよ、叔父上。ミミは、私の部屋で寝かせますから、心配しないで朝までごゆっくり町でお過ごし下さい。さあ、ミミ、こっちにおいで」


 ドラニスタ君は、珍しく団長さんを叔父上と呼び、私の目の前に、自分の手のひらを差し出した。私がドラニスタ君の手のひらに移ると、団長さんは、泣きそうな顔をして、私とドラニスタ君を見た。


 私が元の大きさになったら、団長さんは、どうするんだろう。そうなったら、私は雷神様の元に帰らなければならない訳で。

 副団長さんが言う様に、団長さんには、昨日の令嬢の様な普通の大きさの恋人が必要よね。まあ、昨日のアレは、論外だけど。


 でも、私は……。

 縋る様に私を見つめる団長さんから、目が離せない。





「ドラニスタ殿下。ミミは、本当は、あのサイズでは、ないんですね。で、間もなく私達と同じサイズに戻られる?」


「副団長。ミミから聞いたのか?他の者には言うなよ」


「では、ドラニスタ殿下。ミミは、団長との結婚も可能なのですか?」


「むしろ、私が求婚したいくらいだ。まさか、副団長。お前まで求婚するつもりじゃないだろうな」


「ち、違いますよ。ドラニスタ殿下。絶対、違いますからね」





 人の恋路を邪魔する奴は……バレたらヤバそうです。まあ、頑張って生きてくれ、副団長。

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