ちっちゃな妖精、辺境騎士団にぶつかる
読みに来て下さって、ありがとうございます。
コメディです。心を空っぽにして、広い心で何も考えずに、お楽しみください。
あまり、長くならない筈です。
あーれー!
叫んでも、誰も助けに来るはずもなく。って、雷神様~お助け下さい~。私こと美々子が、莫迦でした~。そして、美央の莫迦たれ~。
神力を使い果たした私は、美央の起こした神風で、凄い勢いで飛ばされた。
やがて、黒い影が現れ、ぶつかって、それを吹っ飛ばして砂の上に着地した。
「うぉー!何か知らんが、助かったぞ。今の内に、止めをさすぞ!一斉に、かかれっ」
野太い男達の雄叫びと、何かをつんざく剣の音。大勢の足音をバックに私は気が遠くなっていった。
ああ、ヤバい。私、素っ裸なんだよね。うぇ~ん。
「団長ー!よ、妖精が落ちてます」
誰かが、私をすくい上げた。ドカドカと揺するような振動がして、何処かに乗せられた。
「これは、これは。何と可愛いらしい。小さな妖精だ」
綺麗な青い目に私が映ってた。そして、その目の持ち主は、すりすりと私に頬擦りして。
止めんかい!私は、素っ裸なんだってば。しかも、ひげ、ひげ、ひげ!いーやー。
事の初めは、どれくらい前だったか。私と妹の美央は、夜にコンビニに行った帰りに車に跳ねられ亡くなった、らしい。
ちょうど異世界から遊びに来てた風神様と雷神様が、亡くなったばかりの私達に、目を付けた。
「おやおや、これはこれは。この娘達は、私達の信者じゃないか」
「本当だ。これは、好都合」
自分達の世界でバイトをしてくれる者を探していたニ神は、喜び勇んで私達の世界の神から、私達を譲り受けて連れて帰った。
その時、私はお気に入りの雷神のスカジャン、美央は風神のスカジャンを着ていたのだ。
「まあ、雷神様好きだし」
「まあ、風神様好きだし」
死ぬよか、良いよね。
うんうん。
ドン、ドン、ドンっと稲光と共に空から雷を次々と降らし、私は魔獣達を蹴散らしていく。
ぶわっと突風が吹いて、四散した魔獣達を更に細かく魔力の分子に分解していく。
雷で蹴散らすのが私、美々子の担当。風で分子に散らすのが、美央の担当。スタンピードの度に、魔獣達を蹴散らし、分解して、魔力の分子に戻して、この世界にばら蒔くのが異世界からやって来た私達のお仕事。
「うーん、今日も良いお仕事、しました!」
背中に背負ってる雷神の刺繍のスタジャンが、心なしか喜んでる気がする。
「ヤバい。張り切り過ぎちゃって、神力が殆ど残ってないや」
美央のスタジャンの背中には、風神の刺繍が光ってる。神力が残り少ないと光出す事になっている。
まるで、何処かの星からやって来た正義の味方の宇宙人のように。
「お姉ちゃん、あっちから砂埃が走ってくる。大型イノシシの魔獣?に追いかけられた、馬に乗った人!」
「え?ヤバくない?あいつ、止まんないよ」
「ちょっと、ちょっとお姉ちゃん。髪の毛の長いキレイな女の騎士だ!」
「すぐに助けるのよ!」
私達は昔から、戦うお姫様やら、女の騎士に目がないのだ。
うぉー!お助けしますよ。騎士様。
はい、どっか~ン!
あれ?ヤバい?
あ、あ……神力が、尽き果てて。力が、どんどん抜けていく。
「お姉ちゃん!?縮んでるよ」
私は、大きくなってしまった自分の服から何とか抜け出し、側に落ちていた手拭いを手にした。素っ裸だったので。
「お姉ちゃん、雷の威力、弱すぎ。後は、あいつは風で吹っ飛ばすね」
ぶわっと美央の周りに風が渦巻き、大型イノシシを吹き飛ばし、ついでに私も吹き飛ばした。
「ごめーん。お姉ちゃーん。神力不足で制御不能ー。風神様~お姉ちゃんをよろしく~」
私は、両手で掴んでいた手拭いに風を受け、飛び続けた。
あーれー。
目を覚ますと、青い目の超絶イケメンが、手のひらに私をのせて、ニコニコしていた。
「やあ、目を覚ましたんだね。可愛い妖精さん」
取り敢えず、誰か何か着るものくれません?他から見ると、イケメンが変態っぽく見えるので。
「団長、妖精が怖がっています」
「ああ、だって、可愛いんだよ。こんなに小さな手に小さな足。小さなお人形の様だ」
「せめて、これでくるんでやって下さい」
「小さな顔、小さなむ、痛っ!」
「小さい小さい言うからですよ。小さくても女の子なんですから、失礼で、痛っ!ごめん、そう言う意味じゃないから。痛っ。ごめん、ごめんってば」
小さなむ……は、禁句だな。うん。