地球は、こんなにも青いのに…。
楽十の、知識の無さが露見しますが、目を瞑ってくださると嬉しいですm(_ _)m
「宇宙は、寒いんだ…」
そう言って、彼は笑った。
「貴方、宇宙飛行士だっけ? 」
そう尋ねると、いんや、と返ってきたので、私は首を傾げる。
「“宇宙は、寒い”…って」
「あー……それは、なんっていうか、ものの喩え、みたいな? そう、だなぁ…」
「地球は、オゾン層に守られてるから、太陽からの有害な紫外線を浴びずに、俺達は快適な気候の中で生きていける」
「で、大気圏が地球を包み込んでるから、隕石が星屑と化する」
「じゃあ、無数の隕石が流れてる宇宙は、隕石を燃やす程の熱があるのかと思ってな」
滑舌良く語る彼に、私は言われてみれば…と納得するも、あれ? と疑問に思った。
「でもそれだと、オゾン層がある太陽の紫外線を浴びない地球の方が、寒いんじゃない? 」
「えっ? 」
「だって、大気圏が隕石を燃やす要因の一つって、重力に従って、隕石が落ちるから、その空気摩擦で燃えるからじゃないの? 」
私の問いに、彼は顎に手を当て考え込むと、確かにそうだがな、と話を続ける。
「噂によると、月は寒いらしい」
どんな噂だよっ! と突っ込みそうになるも、呑み込んで、彼の話に耳を傾けた。
「月には、大気圏がないらしい。だから、地球よりも宇宙に近い月は、重力が小さく、体が浮くんだ」
「それはまるで、砂漠みたいな……つまり、寒い…だけじゃなく、太陽がガンガリ当たってる時はめちゃくちゃ暑く……そりゃあ、とても生活出来る状態とはいえねぇ…極端な星だ」
「………えーっと……」
この会話、コレで100回目だよ、と水を差す様な事を言えば、彼は悲しそうに顔を歪めて、私を見た。
「悪い…っ。いつ、死ぬか、わかんねえ恐怖に、押し潰されそうで…つい……」
「………」
酸素は、いつ失くなるだろう?私達は、いつもその恐怖に襲われていた。
私達の周りには、無数の亡骸が転がり落ちている。
ある者は、酸素が無くなり…。ある者は、隕石にぶつかって…。
彼が私に同じ話題を振ってくるのは、安心感を得たいからだろう。不安が強くなれば、その分、酸素が減ってしまうから…。
「如何して地球は、青いの? 」
全体が硬い地面と岩に覆われた此処とは違い、青く、綺麗なその星は昔、私達の祖先が暮らしていたという。
「殆どが、海で覆われてるから、青いって、聞いた事があるぞ」
「海? 」
「ああ。地球には、海っつぅ、広大な水があるらしい」
「! いっ…行きたいなぁ……」
「無理だ」
「でっ…でもっ! 私達の祖先は昔、あの星に住んでいたんだよね!? だったらーー」
「あんな遠い場所に行ける乗り物がなきゃ、無理だ。それに……大気圏に入ったら、燃やされる。それに耐えれる乗り物じゃなきゃ、俺達は一瞬で焼き殺されちまうだろ? 」
「っ……」
酸素が無くなる心配がなくて、飲みたい時に水が飲める。寝てる間に、流れ着いた隕石がぶつかってきて、死ぬかもしれない…という不安もない。
そんな、美しい星を捨ててまで、如何して祖先は、此処へ移住したのだろう?
「子孫達のコトを、考えてなかったのかな…? 」
「…此処での生活を選んだ時は、最善の選択だったんじゃねえの? 」
祖先達が、地球から発った際に持参した酸素は、もう残り僅か。
この星には、私と彼以外、誰もいない。
みんな…死んで、しまったから……っ。
死への恐怖や孤独の現実から目を背けたい為、熱い抱擁を交わさない?と彼に提案した事があったが、断られた。
子供が出来た時、責任が取れんのか? って。俺達みたいに、寂しくて、いつも恐怖に襲われる日々を味合わせるのか? って。自分の血を分けた子供に、そんな苦痛を味合わせたくない、って。
そんな彼の瞳には、私は映っていなかった。多分、将来を交わしていたあのコ以外とは、家族を持つ気にはなれないのだろう。
「楽に、なれば、イイのに…」
「…は? 」
「っ……うんん。なんでも、ない…」
………でも…。
もし、あのコがいない寂しさや、死への恐怖から逃れる為に、一時的に私を選ぶ彼だったらーー多分、惚れる事は無かっただろう。
責任感が強くて、未来の事をちゃんと考えられる彼だから、好きになったのだ。
「私達…此の儘、死んじゃうのかな? 」
「………」
そう尋ねる私に、彼はなにも答えなかった。
【地球は、こんなにも青いのに…。】
いつか訪れる死までの間、私達は青い星を見つめながら、男と女を意識してしまう内容以外の話題で、語り合う。
それが、祖先が残した情報を知る私達の義務であり、生きる糧でもあったから。
とある歌を聴いてて、浮かんだ話です(`・ω・´)❤️