第六話 どっちの味方だ
悟空たちは、お藤の家を訪れていた。
左膳は湯呑を片手にくつろいでいたが、ふと立ち上がり、如意棒を背負ったショウタに目を留めた。
「……その棒、見覚えがあるな。まさか……おまえ、あの猿の仲間か?」
ピリッと空気が張り詰める。
「猿って……誰のことですかね」
ショウタが肩をすくめるが、左膳は目を細めた。
「こけざるの壺を返してもらおうか」
クラマが静かに告げると、悟空たちも身構える。
「ほう、この壺はこけざるっていうのか!」
左膳が立ち上がった瞬間、刃が一閃する。
「三対一じゃ不利ってのは、わかってんだよ!」
左膳はすでに壺を手にしており、それを高く掲げた。
「近づけば、こいつを割る。柳生の埋蔵金がパーになってもいいのか?」
その声に、クラマが舌打ちした。
「……汚ねえな」
さらに左膳は近くにいたちょび安を腕で引き寄せ、人質とする。
「ちょ、ちょっとお侍さん!? 」
「まあついて来いって。行方知れずのお母とお父に会いたいんだろ?ついでに探してやるからよ」
小声でちょび安にささやく左膳
「あたしも行きます!」
そう言って三蔵が自ら左膳のそばに歩み寄った。
「なんだ、どういうつもりだ?」
「いやちょっと待って、ついていけない」
焦る悟空とショウタ
「助けに来てくださいね?」
「よくわからんがまあいい、とりあえず来い!」
そのまま、左膳は二人を連れて裏口から姿を消した。
「これはやられたのう、カッカッカッ!」
泰軒が楽しげに笑う。
「笑ってる場合じゃないって……」
ショウタは肩を落とし、うなだれる。
「三蔵ちゃん、ほんとについてっちゃって大丈夫なのかな……」
クラマが腕を組んで呟いた。その言葉に、悟空が眉をひそめた。
『子供まで連れてかれたしな。いまのあいつ、ちょっと様子がおかしい』
泰軒がうなずいた。
「やつは、おそらく柳生源三郎のもとへ向かったはずじゃ……ところでお主、さっきから言うことがコロコロ変わるのう。まるで二人で話しておるようじゃ」
「まあ、色々あって…」
クラマが顔を上げる。
「そんなことより、柳生源三郎というのは?」
「かつての知己らしいがの。さて――」
老師はくるりと背を向け、足を進める。
「とりあえず後を追おう。出遅れたら、三蔵殿に怒られるぞ」
「そうですね…」
悟空とショウタは内心小さくため息をついた。
「あんたは行かなくていいのかい?」
お藤が与吉をにらみつける。
「おっといけねえ、ではまた、くし巻きお藤の姉御!」
「どいつもこいつも、人の家をなんだと思ってんだい……」
お藤のぼやきが、静かに響いた。