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天啓の儀

春三です。突然ですがヒロインの名前を変更します。セイラをセーラに致します。

よろしくお願い致します。

「このコブリンで最後?」

倒れているコブリンに、セーラは鍬を振り降ろすと、ショウに聞いた。

「ああ、これで終いだ、コブリンに慣れてきたな」

「私はトドメ刺すだけだけどね」

「戦いに慣れる事が大事なんだよ。さぁ、魔石を拾って」

セーラは魔石を拾い、小袋に入れた。セーラは、森でコブリンに襲われてから、俺に魔物の戦い方を教えて欲しいと言ってきた。俺は快諾した。

今回の件で、セーラには、魔物から身を守る知識と力を、身に付けて欲しいと思ったからだ。俺はセーラを誘い、いつもの森に来ていた。

「それにしても、ショウが凄く強いなんて、知らなかった」

「褒めすぎだよ、俺はそこまで強くはないよ」

「でも、本気出せばコブリンを一発で倒せるでしょ?」

「コブリンは魔物の中でも弱いんだよ、セーラもコブリン位すぐに倒せる様になるよ」

「そうなんだ……まだ一人で戦うのは怖いわ」

「経験を積めば大丈夫だと思うよ、俺がサポートするから、頑張ろう!」

「うん!」

「初めて戦って疲れたろ?今日はここ迄にしよう」

「そうね、帰りましょ」



二人並んで歩き出す。俺はレベル上げについて考える。

セーラと一緒に森に行って、この世界のことで分かった事がある。この世界にはレベルの概念がない。この世界の住人はステータスを見ることが出来ない。ゲームをプレイしていた時は、見ようとすれば、レベルとHPとMPが見えていた。今まで気付かなかったが、ゲームと仕様が違うのだろう。まぁ、ゲームと違って現実なのだろう。NPCでは無く、感情もあり、考えて行動する。

当たり前の事ではあるが、やはり此処は異世界なのだ。

そんな取り留めない事を考えていたら、セーラが話し掛けてきた。

「さっきから何を考えているの?」

俺は慌てて誤魔化した。

「もッ、もうすぐ天啓の儀なんだと思ってさ、良いジョブを貰いたいと思って」

「ショウならきっと凄いジョブを授かることができると思うわ。でも、偉くなって、私の知らない遠くに行ってしまったら嫌だわ」

そう言って、セーラは寂しげに俺の手を握った。だが俺は知っている。手の届かない存在になるのは、セーラだと言う事を。聖女になり、貴族の学園に通う為、王都に行く事を、俺は知っている。セーラが俺に抱いてるのが恋なのか、コブリンから助けた心境からくるものなのかは、分からない。ただ言えるのは、セーラに幸せになって欲しい、それだけだ。

「どういうジョブになるかは、分からないけど、成れるのなら、戦いに向くジョブが欲しいよ」

「ふ〜ん、あッ、もしかしたら勇者だったりして」

セーラはイタズラっぽく手を剣の様にして振った。

「セーラはどんなジョブが欲しい?」

「私は治癒術師が欲しいな。ショウが怪我した時に治せるから」

セーラ、当たらずもと遠からずだぜ。お前のジョブは聖女だ。……話すとややこしくなるから話さないけど。村に戻り、セーラを家の前まで送った。そして俺達は、天啓の儀の前日まで、森で魔物を狩りレベル上げをした。



天啓の儀の朝は、雲一つない晴天に恵まれた。

「それじゃ、父さん、母さん、行ってくるよ」

「本当に一人で行くのか?エメは無理だが、俺は付き添う事ができるぞ」

「俺は一人で行くよ、母さんが無理しない様に見ててよ」

母さんは数日前から、具合いが悪く、午後から医者が往診してくれる事になっていた。

「天啓の儀なのにすまないね、一応お医者様に診て貰うだけだから、心配しないでね」

母さんは、具合いが悪いとは思えない笑顔で送り出してくれた。俺は隣に住んでいるセーラの家まで走った。お隣さんとは言え、畑を挟んでそれなりに距離がある。お隣さんに着くと、セーラが表で待っていた。

「セーラ、おはよう」

「ショウ、おはよう。晴れて良かったね!」

「本当な、おじさんおばさんは?」

「先に教会に行ってるって」

「そうか、気を使わせてしまったかな?」

「そんな事ないよ、気にしないで。それよりも、何か言う事あるんじゃない?」

「言う事?……あッ」

セーラは普段着ではなく、白いワンピースを着ていた。ウエストをベルトで締めて、いつもより胸が強調されていた。

「全くけしからん、もっとやれ!」

「えッ?」

「いやいや今のは違う、とても似合ってます!」

「なんで敬語!?」

「本当に良く似合うよ」

セーラは俯いて小さく呟いた。

「……ありがと」

何か照れるな。間も保たないし教会に向うか。

「教会に行こう」

「うん」

教会に向かって歩き出す。セーラは自然と俺と手を繋いだ。



教会に向う途中、アベルの話になった。ゴブリンに襲われた時、セーラを囮にして逃げたヤツ。ヤツは一人で村に逃げ帰った。その後に俺が泥塗れのセーラを背負って帰って来たものだから、村人は大慌てで理由を聞いてきた。ありのままに話すと、村人はアベルの父親に俺が話た事を、そのまま告げた。俺の話しは村中に広まり、アベルは家に引きこもってしまった。ヤツのことは許せない。勝手に引きこもってろ。



教会の入口には、俺達と同じ年頃の男女十名と大人達がいた。多分、子供達の親なのだろう。教会の扉は開いてるのに、誰も入ろうとしない。まぁ、人生の分岐点だから、気後れするよね。セーラは、ご両親を見つけて、手を振っていた。誰も入らないなら、俺達が先に入ってやる。

「セーラ、こういうのは、さっさと済ませてしまおう」

「そうね、でも、緊張するから、先にお願い」

俺は強めにセーラの手を握り、教会に入った。祭壇の前には、老年の神父、側に羊皮紙とペンを持ったシスター。そのシスターが話し掛けてきた。

「お名前を伺っても?」

「俺はショウ、隣はセーラ、この村の出身です」

「ようこそ教会へ、さぁ、ジョセフ神父様の前に」

俺はセーラと繋いでいた手を離して、神父様の前に片膝を着いて手を組んだ。

「良う来た、これより天啓の儀を行う」

「天の神よ、十五になった子が此処にいます。どうかこの子に生きていく力を授け給え」

ジョセフ神父様の声が、神様に届いたのか、俺の中に何かが入って来た。それは春の様な暖かな風、そして陽光。ずっとこのままでいたい。そう思った時、身体に馴染む感覚があった。

「おおッ、見えた。あなたのジョブは剣士!」

ゆっくりと目を開け神父様を見上げた。

「おめでとう、良いジョブじゃ」

取り敢えず戦闘職になれて良かった。後ろを振り返ると、セーラが嬉しそうに微笑んだ。入口から覗いている人から歓声が上がった。戦闘職を授かるのが珍しいのかな。

「神父様、剣士のジョブは珍しいのですか?」

「珍しい、剣士や魔術師は大体貴族から出ておる。村人が授かるのは、極稀じゃ」

なるほど、異世界ものでよく貴族が血統を重視しているけど、この世界も同じかも知れない。

「神父様、次は私をお願いします」

セーラは両膝を着いて手を組んだ。神父様の願いを神様が聞いた証しか、セーラの身体が光始めた。暖かな、春の様な暖かさ。俺もこんな感じに光っていたのかな。光が収まった時、神父様が驚いた。

「素晴らしい!この子は治癒術師じゃ!」




お読み下さりありがとうございます。

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