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主人公よ、何故フラグを折る!?

春三です。楽しんで頂ければ幸いです。

突然ですがヒロインの名前を変更しました。セイラをセーラに変更しました。よろしくお願い致します。

年が明けて、寒さも峠を過ぎ、天啓の儀まで後一月に迫ったある日のこと。俺は朝早く森に出かけ、魔物を倒し、両親が起きる前に家に戻り、ベッドに戻り込んだ。両親に森に行っているのは、内緒にしている。心配を掛けたくないと言う事もあるが、森の知識や魔物の倒し方に付いて、上手く説明出来ないからだ。そもそも、ゲームで得た知識だから、穴だらけの説明になってしまう。それに、天啓の儀が済めば、アベルとセーラは、王都に行ってしまう。

俺は冒険者になって、たまにアベルとセーラの様子を見守ればいい。



両親と朝食を親父と一緒に藁で紐を編む。まだ農閑期の仕事なんて、そんな物だ。

「ショウ、昼からは遊んできていいぞ」

親父の名はギー。日本にいた時の記憶が戻ってからは、不思議な名前だと思った。母の名前はエメ。やはり、異世界なんだと痛感する。いや、エロゲの世界か。

「ありがとう、父さん」

昼過ぎに両親に声を掛けて家を出た。村の中心に向かって歩いていると、後ろから声を掛けられた。

「ショウ、何処に行くの?」

声を掛けたのは、俺の推しのセイラ。栗毛のツインテールが揺れている。やっぱり可愛いな。

「親父から暇を貰ったから、遊びに行こうと思ってな。セーラも村の広場に行くのか?」

「私はアベルと野草を採りに行くの」

「籠を持たずにか?」

「籠はアベルが持ってきてくれるの」

なるほど、いい感じで何よりだ。このまま順調に愛を育んでくれよ。

「何処まで採りに行くんだ?」

「村を東から出て森に行くの」

「そうか、魔物には気をつけてな」

「……ショウも一緒に行く?」

待て待て、お邪魔虫もいいとこじゃないか。

「俺は遠慮しとくよ」

「もうっ!連れて行ってって言っても、連れて行かないんだからね!」

解せぬ。何で推しのヒロインがイチャイチャする所を眺めなきゃならんのだ。アベルとの恋仲は応援するけど、見せ付けられるのは敵わん。適当に誤魔化そう。

「ハハハッ、俺も今年で十五になる。気を利かせているつもりだ」

「……一緒に行きたいのに」

小さい声で呟いたセーラの言葉は、ショウには、届かなかった。



村の広場に行くと、アベルが井戸の近くに腰を下ろしていた。セーラのエスコートもここ迄だ。

「よう、アベル」

「ショウか、お前も付いてくるのか?」

「付いてくるって……あのな、俺は犬じゃないんだから、まぁいいか、セーラとは、広場に行く途中で一緒になったんだよ」

「そうか、じゃあセーラ、そろそろ行こうか」

「……うん」

セーラは、村をでる迄何度も振り返り、俺に何か言いたげな視線を送っていた。

「いいのか?セーラをアベルと一緒に行かせて」

コイツはバジル。雑貨屋の跡取り息子だ。

「その言い方だと、アベルに不満でもあるのか?」

「あまり良い噂は聞かねぇな、何故東の森なんだ?」

「さぁな、東の森は入ったことがない」

「東の森には狩人の小屋がある。この時期はまだ狩りに出ないから、使い放題だぜ」

「……まさか!?本当にそうなのか!?」

「アベルと一緒に野草採りに行った女の子は、セーラ一人じゃない。その女の子は野草採りから帰って来た後に家に引きこもっているってよ」

アベルは、ゲームの主人公だから、あまり干渉するのを躊躇っていた。それにしても、アベルのヤツ、随分ゲームの性格と違うじゃないか。

「バジル、ありがとな」

「東の森の入口の脇に獣道がある、獣道を進めば狩人の小屋がある。ショウなら追いつけるさ」

「ああ、行ってくる」

俺は全力で村を駆け抜けて、東の森迄走った。



森の中は薄暗く、日が差さないのか、所々に雪が溶けずに残っている。アベルとセーラは、雪が溶けて泥濘んだ獣道を慎重に歩いていた。

「こんな奥迄来て大丈夫なの?」

「森から浅い場所は採られて残ってないんだよ。もうすぐだから」

アベルの返事に、不満を持ちながらもついて行くセーラ。

やがて木々の間から小屋が見えた。アベルがセーラの腕を掴むと下卑た笑みを浮べた。

「あの小屋で休憩しよう」

「イヤ!!」

アベルの何時もと違う雰囲気に、恐怖を感じたセーラは、アベルの手を振り解いた。

「なんだよ、つれないな」

「私、帰る!!」

「ここ迄来て帰るのかよ、ふざけんな!!」

「!?」

セーラは初めてアベルの本性を知った。逃げられない。その時、子供位の背丈の何かが、木々の間を縫うように、アベルとセーラの前に現れた。

「ギャッギャッギャギャ」

「うわっコブリンだ!?」

「これがコブリン」

アベルは放心状態のセーラをコブリンの前に突き飛ばし、森を抜けるべく駆け出した。

泥濘んだ土の上に転がった先には、コブリンが涎を垂らしてセーラを見つめている。

「イヤッ……来ないで……来ないで……ショウ!!」

「お待たせ!!」

セーラはショウの声を聞いたと同時に、コブリンの頭が爆ぜるのを見た。

「セーラ、怖かったよな、大丈夫か?」

「うぁぁぁん!怖かったよぉ!!

「そうだよな、怖かったよな、もう大丈夫だから、立てるか?」

「……腰が抜けちゃて立てない」

「わかった、俺の背に乗れ」

「私泥だらけで、ショウの服が汚れちゃう」

ショウは恥ずかしそうにセーラの頭に手を置いて笑う。

「そんな事気にすんな」

「……うん」

ショウはセーラを背負って歩き出す。

「セーラが無事で良かった」

「だから……一緒に行って欲しかったのに」

「いや、まさかあんな事になると思ってもみなかった。それに邪魔しちゃ悪いと思って」

「私、アベルの事は何とも思ってないんだからね」

ショウはセーラの言葉に思わず立ち止まってしまった。セーラが背中から強くショウを抱きしめた。

そう言えば、セーラって大きいんだよな。ゲームの時は何度もお世話になりました。ありがとうございました!!

「何を考えてるの?」

「うぐっ!?あまり押しつけるなよ」

「えぇ何でぇぇ」

「このヤロウ、俺だって男なんだぞ!!」

「ショウならいいよ」

「とっ、とりあえず、もうすぐ日が暮れるから帰るぞ」

「わかったわよ、ねぇショウ」

「なんだ?」

「助けてくれてありがと」

「どういたしまして、帰るぞ」

「うん」

ショウは歩き出した。セーラは胸を押しつけてくるが……気にしたら負けだ。





お読み下さりありがとうございます。

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