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災いと夢

災いは、自然が起こす災害でもあり、

何者かが起こした呪いでもある。


望みを叶えるために世界を壊す者もいれば、

世界を救うために望みを捨てる者もいる。



これは10000年の間で起きた物語。

ほんの一瞬の物語である。

遠い、遠い昔の話。


あらゆる生物を蝕む黒い霧が、世界中を包んだ。

毒を含んだ黒い霧は、花や草木、生命を脅かし、

瞬く間に世界は汚染された。


そんな世界でも、懸命に生きようと足掻く、ヒトと怪物がいた。


人間の少女“苗”と、異形の怪物“先生”は、

古ぼけた木造の小屋で、寄り添って暮らしていた。



苗には不思議な力がある。

“毒を浄化する効果がある花を咲かせる”


しかし花を咲かせるためには、

自分の生命力を代償にしなければならなかった。


苗は毒の霧が充満したこの世界に、

たくさんの花を咲かせるのが夢だった。



先生の頭は松明の炎のように揺らめいている。

顔と思われる場所の中心には、紫の目が一つ。


身にまとっている白衣の裾からは、

鈎爪を持つ手の形をした影が伸びている、まるで霧のような姿だ。


先生の夢は、この世界が緑あふれる大地になるのを見ることだった。



夢というものは、そう簡単には叶わないものだ。

人間である苗にとって、この世界は過酷な環境だった。


というのも、苗は浄化の力を持っているとはいえ、生命ある人間だ。

多少の免疫はあれど、長時間外に出れば、

毒の霧の影響で体調を崩し、最悪、命を失う。


それでも苗は、自分を犠牲にして花を咲かせる。

一度咲いた浄化の花は、枯れることはない。


何度先生が止めても、笑顔で苗は外に飛び出した。

そんな苗のことを支えるのは、先生だった。



先生は度々、苗の検査をする。

体に異常はないか、毒を吸い込みすぎてはいないか、脈は安定しているか。


それは医者の真似事に過ぎなく、ただ確認するだけの作業。

毒の影響を受ければ、二度と良くなることはない。


ただ、苗にとっては、この“先生”と“患者”の真似事が楽しかった。


苗と先生は、世界でただ2人だけの、家族のようなものだった。

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