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第三章 魔女のうわさ

 いやいやいや!ちょっと待ってくれ…

 人の言葉をしゃべる黒猫を従えた1000年以上生きてるといううわさの魔女だって!?すごい話が出てきたぞ…。ちょっと状況を整理させてくれ…


 カリストさんに何が起きたのか、呪いを信じないおれは自分で調べ始めたけど、調べれば調べるほど謎は深まるばかりだった。


 前世で見た「刑事ドラマ」ってのをまねして聞き込みをしたり現場を何度も調べたりしたけど、わかったことは誰もレオン以外の人の出入りを見てないってことだった。

 ちなみに最近のおれは前の人生のことを前よりもピンポイントに思い出すことができるようになった。だけど相変わらず前のおれについてはあいまいでよくわかんないし、こんなものがこんな風にあったな、ってのがわかるぐらいだ。今のマックスであるおれと完全に意識は切り離されてて、別人の日記をぼんやりのぞき込んでる感じに近い。


 それでレオンの家は荒らされた家の中は居間だけで、そのせいで壊れた物はあってもなくなった物はない。ってことは何かを盗むためにこんなことしたんじゃないってことだ。

 それにカリストさんは傷だらけだったけど、その傷が何でつけられたのかもわからない。もし最初からカリストさんの命を奪うつもりだったなら、ぶすりと一突きすれば済むことだ。あんなに傷を付けるなんて、そんなに恨んでたってことか?ひどすぎる…。恨まれるような人じゃないのに!

 おれが話しかけた時、カリストさんはまだ息があった。その時に誰に襲われたのか、おれに言えたはずなんだ。でもカリストさんが言ったのは「鍵をリーザニカ様に渡せ」だった。


 だから、最後にして最大の手がかりは「リーザニカ」って名前の人だ。遺跡の鍵に関係するならきっとレオンの方が詳しいんじゃないかと思って聞いてみたけど、アイツも知らないって言った。もっともああいう秘密めいた仕事だと、正式な当主として役目を引き継がないと知らせないことも多いんじゃないかなって思う。奥義とか秘伝のタレとかと同じ感じだろうな。

 これ以上レオンの家を調べたり近所の人に話を聞いても進展はなさそうだ。だからリーザニカっていったい誰なのか、鍵を渡せって言われたけどどうやって会って渡せばいいのか、おれたちはこの辺を調べることにした。


 で、それでだ!やっとレオンが思い出したっていうから何かと思ったら、リーザニカって人は王都に住む魔女で!1000年以上生きてて!人の言葉をしゃべる黒猫をつれてて!王様を裏で操って歴史の裏で暗躍してるだって?


 どう考えてもおとぎ話なのに、王都ではこの魔女のうわさっていうのは結構メジャーな話で、実在していて宮廷に出入りしていて貴族なら会ったことある人もいるってことらしい。ってことは王都では有名人なんだな!

 そんな人がこんな田舎のいわくつきの遺跡にかかわってるなんていまいち信じられないんだけど…。


 ところでおれはここにきてふと疑問に思ったことがある。

 マックスであるおれが今生きてるこの世界は、もしかしたら前世のおれが読んでいたマンガとかゲームの舞台なんじゃないかって。前世ではそういうのを題材にした話が結構あった。このパターンだと、この先何が起こるのかとか重要人物の心情や隠している過去なんかを「知っている」から、悪い未来をさけたり、事件や事故を未然に防いだりできる。

 あ、そうそう、異世界転生の前世チートってやつだ。


 これ、もし今のおれに当てはまってればこの先すごく動きやすくなるんじゃないか?カリストさんの死は防げなかったけど…。ここから先の展開がわかれば話は変わってくるはずだ。

 だって、しゃべる黒猫を従えた魔女がいるなんて、現実味がなさすぎる。そしたらここが前世のおれが好きだったゲームの世界だって言われた方がまだ納得できるな。


 と、思ったんだけど、そもそも前のおれに関することはあんまり思い出せないからムダだった。どんなに思い出そうとしてもマックスであるおれが生きるこの世界に関する記憶は前のおれにはなかった。

 前のおれが生きていた日本って国と、今のおれが生きてるブランシュロ王国のギュズラ、まったく全然これっぽっちもつながりがない。前のおれが知らないだけで本当は何かのゲーム世界とかかもしれないけど、知らないんじゃ意味ないなぁ~。


 立て続けにいろんなことが起こったせいで日常生活の感覚が戻らない。だからこの世界の設定があるのかとか考えたんだろうな。今おれが生きてるっていうのは確かな現実で、そこに「設定」なんてない、リアルなんだって、当たり前のことなんだけど。

 リアル感覚でいうとこれから、ギュズラの領主・ギーズ侯爵様に直接お目通りかなうっていうのに、全然実感がない。


 というか魔女の話が強烈すぎた!強烈すぎて領主様に謁見するっていう事実がかすむ。おれみたいな平民、ただの宿屋の息子からすれば、ご領主様は雲の上の人なのに、なんかあっさりとお城に通してもらった。ま、おれはついでで、レオンの手紙のおかげなんだけどな。

 当然、領主様のお城なんて初めて入った。

 ひ、広い…。貴族様っていうのはこういうところに住んでるのか~。自分の家の中で迷子になったりしないのかな?


 そんなこと考えたりレオンと話したりしてるうちに、侯爵様がお見えになられた。普段のおれだったら緊張して死にそうになる…。遠目から見たことはあっても間近で、しかもお声をかけていただくなんて初めてだ。 

 侯爵様は神々しいぐらいキラキラしてて、かっこいい…、というか、ああ、そうだ!まさに美男子(イケメン)って感じのお方だった。

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