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第2話 憑依した私

「ペッペッペッ! ちょっと! 何よこれ! 口の中に土が…‥信じられないっ!」


口の中に入った土を吐き出し、袖で口元を拭い……驚いた。

何と私が今着ているのは、ゴージャスドレスだったのだ。まるで黒いウェディングドレスのようにも見える。


「な、な、何の……? このドレスは……?」


すると、頭上で悲鳴が起こった。


「ギャアアアッ! い、生き返った!?」


「そ、そんな……死んだはずよ!!」


「助けてくれ! 神よ!!」


「迷わず天に召されて下さい!!」


黒いスーツやドレス姿の何ともクラシカルな出で立ちの人々が私を見て震えている。彼らはまるで西洋人のように堀の深い整った顔立ちをしていた。


だが、迷わず天に召されて下さいと言う言葉は聞き捨てならない。


「はぁ!? さっきから一体何を言ってるのよ!!」


立ち上がって文句を言うと腰を抜かす人々が続出する。


「ぎゃああ!! 立った! 立ったぞ!」


「死人が生き返るなんて……この世の終わりだ!」


「はぁ!? 死人って……!」


死人という言葉に食ってかかろうとしたとき。


「メリッサ! ま、まさか……お前、死んだふりをしていたのか!?」


1人の青年が私を指さした。


「メリッサ?」


その名前を口にした途端、私の頭に怒涛の如く何者かの記憶が蘇ってくる。



私の名前はメリッサ・アーモンド、24歳。

夫はジルベール・アーモンド。26歳で私よりも2つ年上。

私は資産家の娘であり、ジルベールは男爵だが名ばかりの貧しい貴族。


メリッサの父は貴族に憧れ、爵位を手に入れる為に娘をジルベールに嫁がせた。

一方のジルベールは没落したアーモンド家を立て直すために、愛してもいないメリッサに求婚して2人はめでたく結婚。


何しろメリッサは美しい青年ジルベールに恋していたので、この結婚を喜んだ。

しかし、ジルベールにはアロアという恋人がいた。彼女もまた平民だったが、私よりずっと貧しい身分で結婚出来る様な立場にはない。


つまり、メリッサは愛する恋人たちを引き裂くような形でジルベールと結婚したのだ。

そうなると、当然2人の結婚はうまくいくはずはない。


ジルベールは結婚初夜からメリッサの元へ来ることはなく、同じ屋敷に住まわせた(なぜ、そんなことが許されるのか考えられない)アロアの部屋を訪ね……濃厚な夜を過ごしたのだ。


新婚初夜に不貞を働く夫に激怒したメリッサは、怒りの矛先をアロアに向けた。


メリッサはこの事実を両親に訴え、嫌がらせの為にジルベールに資金を援助するのをやめるように父親に訴えた。

可愛い娘の訴えを聞いた父親はジルベールの個人資産を凍結し、一切の資金援助を断ち切った。

代わりにジルベールに渡す予定の資金を全額メリッサに渡すことにしたのだ。



 一方、面白くないのはジルベールの方だった。

巨万の富を手にするメリッサの父親のお金目当てで結婚したのに、肝心の資金援助を受けられなくなったからだ。


そこで、ジルベールはメリッサにお金を渡すように命じるも、彼女はこれを拒否。

メリッサの態度に頭に来たジルベールは恋人と共謀して、彼女を殺すことにした……。


という、記憶が一斉に頭の中に流れ込んできたからだ。



「ううっ……」


あまりにも一気に情報が頭の中に流れ込んできたので、私は頭を抑えた。


すると人々が騒ぎ立てる。


「死人が苦しがっているぞ!」


「いや、待て。本当に死人なのか?」


「実は死んだふりをしていただけだったりして……」


「メリッサ! お前、まさか魔女だったのか!?」


ジルベールが再び私を指さしてきた。


「はぁ!? 誰が魔女よ! 私が魔女ならあんたは悪魔よ! そこの女もね!」


私はジルベールから少し離れた場所に立っていたアロアを指さす。

恐らく2人は自分たちの関係を世間に知られたくない為に距離を置いて立っていたのだろう。


「な、なぜ俺が悪魔だって言うんだよ! それよりお前の方が余程悪人だ、この悪女め!」


葬儀で集まっていた人々は、口を閉ざして私とジルベールの会話を聞いていた――

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