表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

1 突然の再会

 大学院へ進み、私は地元のパン屋でアルバイトを始めていた。

 このパン屋は地元ではかなりの人気店で、私も中高生の頃は登下校中に立ち寄っていた。

「心美ちゃん、レジ頼んだよ!」

 厨房から声を張り上げたのは、このお店のオーナーの奥さんの和代かずよさんだ。和代さんは、そのふくよかな外見に見合う、温かい性格の持ち主だ。飛び込みで入った私のことを、とても良くしてくれている。本当にありがたい。

「はーい!」

 返事をしてレジに立つ。時計を見ると、そろそろ忙しさがピークに差し掛かる時間だった。

 十二時半ごろから、会社員の方が昼食を求めてやってくるのだ。朝の通学、通勤ラッシュとは違い、飲み物などを頼む人も増えてくる。そのため、忙しさは倍になる。

「ごめんなさい、フォーク付けてもらえますか?」

「かしこまりました!千六十八円になります。ありがとうございました」

 レジ打ちを間違えないよう、慎重に。かつ急いでお客さんを捌いていく。ただでさえ人手不足なのだ。アルバイトごときの私なんかが迷惑をかけちゃだめだ。

 しばらくの間、必死に口と手を動かし続けていた。いつものようにミスがないように。

 そして、お客さんの数もピークを過ぎ、お店に静けさが戻ってきた頃。帽子を深く被った男性が来店した。しばらくパンを物色し、チョココロネをトレイにのせてこちらへと持ってくる。

「すみません、ここって電子マネーって使えますか?」

 思わず耳を疑った。

「え……」

 思わずビニール袋にパンを詰めていた手を止めた。

 信じられなかった。ここ一年半耳にしていなかった、大好きな声。聞き間違いかもしれない。

「あの……」

「あ、すみません!電子マネーですよね、使えますよ!」

 私が顔を上げると同時に、男性も顔を上げた。しかし、目は合わない。男性は画面に表示された合計金額を見ている。

 それでも、気づかないはずがなかった。

「……くうちゃん?」

 バーコードを出すためだろう。スマートフォンを操作していた男性の手がピタリと止まった。

「くうちゃん?……そうだよね。くうちゃんだよね」

 私がもう一度言うと、男性はゆっくりとこちらを見た。

「……心美?」

 来店した男性は、私の大切な幼馴染の石原いしはら黒音くろねだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ