その頃のルフナ
たまの休日にゴロゴロと寝そべる。
なんかブルーに階級が上がってから忙しくなったなぁ…おかしい。
給料と労働量が釣り合っていない気がするぞ。
明らかに前よりか疲れている。
まー、30歳の大台にのっちまったしなぁ。
そのせいもあるかも知れねぇ。
最近あちこち出掛けることも無くなったし、たまの休みに休養とるのも仕事のうちよ。
よし、今日は自宅でゴロゴロするかぁ。
俺の名前はルフナ・セイロン。西ギルドに所属する冒険者だ。最近、あまりにも有能過ぎてギルドに目をつけられてしまい昇任しちまった凄腕ギルドマンよ。
あー、少尉殿元気にしてるかな。
結局、電話掛けらんかった。
その話しを10歳下の妹にしたら、「お兄のヘタレ。外面は強面で漢らしくて格好良いのに、台無し。肝心な所で勇気ださんでどうするの。」と叱られた。
俺が実家を出たときは、「お兄ちゃん、行かないで。」と泣いて止めて縋りついてきたのに。あの可憐で儚い妹は何処に行ってしまったのか。
姿見は、あの頃を成長さしたままなのに、中身は逞しく育ってしまった。中身とのギャップが激しい。
もっとも妹に言わせると、変わっとらんと言う。
だか、何と言われようとも妹は可愛い。
少尉殿と同じくらい可愛い。と言ったら
「なんばいっとるか、だからお兄は駄目駄目やん。」
また叱られたな。
北の衛星都市の貴族様に仕えているとか。
今度、遊びに行ってやるか。
暇だ。暇は良い。
お昼は、ウドンだ。
漬けウドンにして食べる。
まあ、なかなかイケる。
だが、ふと寂しくなる
ああ、こんな時、嫁さんがいてくれればなぁ。
エプロン姿の少尉殿を思い浮かべる……よし。
なかなかだ。少し元気になる。
端末から、今月のファンクラブ会報を呼び出す。
写真を見る。
「うおぃ。」ビックリして鼻からウドンが出た。
少尉殿が黒髪になっていた。
背景がギルドのエントランスだ。
写真下の解説を読み込む。
…なるほど。黒山羊め。少尉殿の髪にぶっかけるとは羨ま…いや許せん。山羊汁にして食ってやるぞ。
しかしよくよく見ると美しい濡羽色だ。
これはこれで良し。
本物を最近見ていないので、ジロジロと見る。
襟元が開いている。自然胸元に目がいく。
これは大人の男ならば致し方ないことなので仕方ない。
むむっ、…こころなしか胸が大きくなっているような気がする。…けしからん。
こんな油断した少尉殿の写真を会報に載せては、少尉殿のアラレもない身姿が下賤な男の目に映ってしまう。
そして、少尉殿のアンナ姿やコンナ格好をさせた姿を妄想する輩がきっといる。けしからん。
こんな妄想したら…少尉殿が汚れてしまう。
よし、ダージリンに抗議だ。
何故だ。
「忙しい時に馬鹿な電話掛けないでちょうだい。男ならドシッと構えてなさい。これ以上、拗らせるなら今、仕事斡旋するわよ。切るわ。」
逆に怒られた。
何故分からぬ。ああ、こんな魅力的な写真を公開してはならんとゆうのに。俺だけなら構わないが。
いかん。落ち着け俺。
少尉殿にとって俺のイメージは、頼りがいのある寡黙で、時には冗談も解する大人の男に違いない。
まあ、だいたいイメージ通りなんだが、油断できん。
本物と会った時に嫌らしい視線を向けないように、不快な思いをさせないように練習しといた方がいいかな。
写真を見る。
見れば見るほど可愛い。まずい。これはまずいぞ。
河川の土手沿いを全力疾走で走る。
40分間、煩悩を打ち払い、走ってきたぜ。
俺はやった。俺はやってやったぞ。
は、は、は。
それにしても、今更ながら黒山羊の解説下りを思い返す。
これって少尉殿、世界救ってねぇか。