視るもの
借りていた拠点の部屋に戻る。
…誰も居ない。
実は、東方ギルドに来てから、ずっと見られている気がしてた。
だけれでも周りを見渡しても、誰も居ない。
……違うのだ。
普通の見方ではない。
まるで時空の向こうから見られている感覚。
僕のファンなら、まあ良し。…いやダメだよ。
それストーカーじゃん。…恥ずかしいしさ。
そんな訳で、真相究明の為、ファーちゃんに、ストーカーのストーカーを頼んだのだ。
ふと思う。この任務、ファーちゃん向きだっただろうか?
ファーちゃんは、結構派手な美少女だ。
歳が15歳で、まだ幼いから花の蕾のような印象を受けるが、将来的には大輪の花を彷彿とさせる美人になるであろうことが分かる顔立ちだ。
もう少し成長したら、通り過ぎる人達誰もが振り返る美女になって、素敵な出会いと恋をして、結婚して、幸せな家庭を築いて……ああ、素敵ですよね。
でもファーちゃんに釣り合う殿方がいるかどうか…心配です。はーー。
そして、今も視線を感じます。
ジッと見られてる、まるで考えてることまで見透かされてるような。
僕は、部屋を掃除して、最後に一礼して部屋を後にした。
ギルドと駅は、相当離れてます。
ギルドは大通りを通るバスの通り上にありますので、電車通勤するには、えらい不便なのです。
しかも、途中微妙にうねった住宅街を通ります。
尾けて来ているのが分かります。
僕は、ギルドを出ると、北上して住宅街を通り過ぎ、繁華街を通り過ぎ、駅のロッカーに菓子折りを入れてから、通り過ぎて、朽ち果てた高速道路を左に折れて歩いて行きました。
ここまで来ると、さすがに一人もいません。
そう誰も姿を見ないのです。
僕は、左側にある、いまや誰からも管理されていない元公園であろう広場の中央に立ちました。
ここからならば、周りを一望できます。
ここで乙女の後をつけ回す嫌らしいストーカーを駆逐してやる。
もし逃げられても、ファーちゃんが逃げ場所を突き止めてくれるかも…でも、まあ、実はそこら辺はあまり期待していない。
ファーちゃんには、危険な事に巻き込まれて欲しくない。
でも、このままではきっと一緒に戦かおうとするに違いないのだ。だから任務と称して遠ざけました。
未来ある若者をここで死なせるわけにはいかないですから。
僕自身も若者だけれども、やはり歳上としては、自分よりも歳下には死んで欲しくないのだ。
子供は守る。絶対に。
そして未来を託すのだ。
頼むよ。未来ある若者よ。
その為に、危惧材料は出来る限り刈っておくからね。
逢魔時。
魔と会う時間帯だと言う。
辺りは、すっかり夕方となっていた。
見られている。
しかもかなりの大人数に。
「search。」…パターン赤100、青1。
眼を凝らす。…見えてきた。
広場を埋め尽くしている…僕を中心に。
対話は要らない。
全部駆逐してやる。
最近戦っていないので、身体が鈍っていたところだ。
ファーちゃんも観ているし、人生の先輩として少しは良い所を見せてやろう。
さあ、戦いのお時間です。




