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アールグレイの日常  作者: さくら
東方見聞録
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トラブルバスター

 朝だ。

 

 実は僕、朝は弱い。

 ので、夜は遅くても午後11時には寝るようにしている。

 睡眠時間の確保だ。


 寝ている間に脳は自動的に記憶を整理してくれるらしい。

 きっと神経細胞が、僕が睡眠中にシナプスの枝を伸ばして、新たなネットワークを構築してくれているのだろう。

 昼間、食べた知識や経験知、思考を餌にして脳内で与え合い新たな気づきに発展していくのかな。


 僕の中にある世界樹の芽が、寝てる間にニョキニョキと成長して行くのを妄想してしまう。

 きっと当たらずとも遠からずだ。

 今は、きっとそういう認識でいいと思う。


 寝てるだけで、勝手に成長するなんて!

 楽ちんだよ。


 なんて怠惰な僕に都合の良い情報なんでしょう。

 人は自分が信じたいものを信じる。

 だから、睡眠は僕の中では優先順位一位だ。



 朝、午前5時だと冬はまだ暗かった。

 でも、だんだんと白じんで来て、春の近づきを教えてくれる。

 ペンペン様は、まだグウスカ寝ている。

 のぞくと幸せそうな顔をして寝てた。

 ……僕も幸せ。


 ペンペン様は、朝はパンなので、昨日食パンを買ってきて置いてある。

 お湯を沸かし、珈琲豆を挽く。

 挽く作業は、手応えがあり面白い。


 珈琲を一杯だけ飲む。

 僕は、臆病なので仕事がある朝は緊張して食べれないから。


 支度にかかる。

 既に昨日寝る前に、出来るものは済ましてあるので、主に確認作業だ。

 身に付ける物は衣装ケースの上に並べてある。

 一つ一つ身に付ける。


 火の元と戸締りを確認して自宅を出る。

 ペンペン様、行ってきます。



 今日は、ギルドのラウンジで、ファーちゃんと合流する予定だ。約束した時間は午前8時30分。

 これはギルドの就業時刻が、この時間だから。

 今は、午前7時30分。

 1時間前だ。ちょうど良い時間。

 東方ギルドのラウンジは、凄く広めに取ってある。

 一角に喫茶スペースを設け、机と椅子も、通行の妨げの無い位置に設置されている。

 まるでホテルだ。

 来訪者をもてなそうという設計者の意図が伺える。

 創業者は、きっと立派な方だったのだろう。

 しかし、所々、薄汚れている。

 維持、管理が上手くいってないのかな。

 責任者に、管理に伴う権限を与えていないか、元から責任感が希薄なのか…どちらにしろ上手く機能していないのだろうと思う。

 受付は来訪者に注意を向けていない。意識散漫。

 全体的に目配りしている統括者は…いない。

 本当にここギルドなの?


 西ギルドとの違いに驚く。

 西ギルドならば、まず腹黒受付嬢か代わりの者が来訪者をチェックしている。常連のギルド員でなければ必ず声を掛ける。

 受付嬢以外でも、全体を統括して見てる者がいて、何か異常あれば、複数人で駆けつける。

 組織で動き、漏れなく警戒が徹底している。


 やはり、そのものの価値というものは比較すると分かりやすい。物差しで測ることが出来るからだ。

 よく大きな数字を、持論の根拠にしている人達がいるが、単独の数字では大小は関係ない、意味が無いと言えば語弊があるが、数字とは比較するものがあって初めて役立つものだ。

 もし、他の数字が大きければ真逆の結論がでるかもしれない。

 つまり、東方ギルドは、西ギルドのレベルを10とした物差しで測ると、レベル1程度かなぁ。

 組織で重要なのは人だからね。

 不要な掲示物も多いし、外れかかってるのもある。

 隅に塵が溜まってる。掃除してないね。

 廊下に段ボールが無雑作に置かれている。物品管理がされてない。

 来訪者が居ても、職員同士で固まってお喋りしている。

 別に粗を探すつもりで、この時間に来たわけではないけど、あまりの酷さに自然と目についてしまう。

 そう言えば、以前僕が在籍していた迦楼羅ギルドに雰囲気似てるかもしれない。

 付近を検索して戻ってきたら、ファーちゃんが既にいた。

 「早くないですか?」と言ったら、「テンペスト様はもっと早いでしょう?」と返された。

 どうやら、出勤の際、僕が建物に入った所を偶然見たらしい。

 早速対策会議を始める。

 二人しか居ないけど。5分で終了した。

 

 結論を話すけど、急がば回れで、各個撃破することになった。面倒だけど致し方なし。お互いの意見があって議論にすらならなかった。

 なお既に一人目のアポは取っていて、他の人の予定もある程度、把握しているようだった。

 仕事が早い、いや普通なのか。

 多分僕でも同じ立場だったらそうする。

 おこがしくも僕という物差しでファーちゃんの行動を測ると、僕と行動がブレなく一致する。

 つまり、普通ということだ。


 普通だとしても行動にブレが無いので、非常に動きやすい。

 しかしこれは、もしかして僕の動きに、ファーちゃんがレベルを落として合わせてくれてるのかなと思わなくもない。


 一人目は、狸さんを除けば、ドアーズ派の重鎮。

 ブロークン・ドアーズ氏だ。

 狸さんを神輿に担いでいる実質ドアーズ派閥のNo.1だ。

 国で喩えれば、狸さんを王様とすれば、宰相のようなもんだ。金融、不動産業を営んでいる。

 狸さんの傍系のその又傍系の血筋で、かなり遠い親戚といえる。準男爵だからギリ貴族だ。

 趣味は筋肉トレーニング。プロレス鑑賞、トライアスロンで世界制覇することが夢らしい。

 39歳独身。嫁さん募集中。

 見た目は、カイゼル髭付き細マッチョ。

 性格は、クール、緻密。

 可愛いものに目がない。魔法少女シリーズものの動画購入履歴あり。虎猫と黒猫を飼っている。


 あれ?かなりディープな個人情報があるような気がするのだが。

 えっ、普通だから気にしないでくれって?

 そう、普通ならばいいか…。


 まずは話しを聞くのだ。不平不満を残さず。

 トラブルは、大抵相互の不理解が起因している。

 感情のもつれを、まずは直すのだ。


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