恋愛ラプソディ(続編)
逃げ出した男達を追っている最中、急に猛烈な寒気に襲われた。
…はわわわ!?
まるで背骨に沿って寒気が昇るようなゾゾっとする気色悪い感覚です。
今まで感じたことのない気持ち悪さに、思わず自分の身体を護るように両手を回して身を縮ませた。
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。
ゾッとする気持ち悪さは、急に訪れたと同様に、急に去って行った。
何今の?
これは、多分僕に対する害悪を察知したのだろうなと思う。
実は、今日に限ったことではないけど、成人になる前、ある時から頻繁に不躾で遠慮ない視線に、それを感じることはありました。
それとは僕を欲望の対象とした視線です。
隠形の術を開発してからは、格段に減りましたけど。
….気持ちは分かります…分かりますけど、見ず知らずの人から、そのように見られるのは、慣れない。
当時の親友に苦慮しているのを話すと「美しいものを愛でるのは人間の性だし、男が女性に対して魅了されて惹きつけられるは自然現象…アールの魅力が高い証よ。お婿さんは引くて数多で将来は選び放題だわ。良かったわね。」と、朗らかに頭を撫でてきた。
…いやいや、全然良くない。
僕からしてみれば、お婿さんは、一人だけだから、そんなにモテても仕方ないです。
しかし、今日感じたのは格段に気持ち悪かったですよ。…涙目になるほど。
比べると以前のクール君の視線など、そよ風に感じるほどです。
もしかして、この先に変態がいるのですか?
覗き行為を是とする変態ですから、手で触れる近づくことも忌避するような生理的に相入れない変態を、僕は追跡しているのかもしれない?!
…追跡するスピードが若干ゆるむ。
僕は、前世が男なので、男性の性欲に関する衝動については理解はある方だとは思う。
しかし、今世では未だ乙女のままなので、潔癖ともいえる生理的嫌悪感だけは、ままならない。
…
うーん、やはり、ままなりません。
この世界には、犯罪と定義される違反行為は極端に少ない。
守らなくてはいけないルールは、法律というより掟に近い概念です。
だから、覗き程度は犯罪にも該当しない。
しかし、やってはならぬことは当たり前なので、その都度、個々別々、見つかったら個人の判断により処分されている。
特に貴族の女性に対する覗きは、捕まったら極刑に処される可能性が高く、覗くほうも命懸けです。
士官学校の女子寮のお風呂には貴族の子女も入ります。
なのに、そこまでして見たいですか?
僕は…異性の身体など見たくないけど。
覗きに生命すら掛ける気合いの入った変態を捕まえなければならない。
しかも、逃げながらも僕に懸想する変態です。
しかし、生理的に気持ち悪いからといって、引く選択肢は、僕にはない。
変態ならば…触らなければ、良いのだ。
捕縛系の魔法は苦手ですが、苦心惨憺してアナスタシアに教えてもらった結果、試行錯誤アレンジして一つだけは、人並みには修得できました。
うんうん…普段から修行はしとくものです。
何が役立つか分からない。
「search!」
左から右へと魔力線を強烈に飛ばす。
宣戦布告です。
逃げる9人の位置情報と、能力値が脳裏に浮かんだ。
既知の3人は、無視です。
僕の仲間に、変態はいません!
クール君は足を踏み外し掛けたけれど…以前ダージリンさんに凶悪に注意されたので、身体で覚えているに違いない。
それにクール君程度の妄想ならば、きっと可愛いものです。
残る6人の中に、覗きを是とする変態が居るに違いない。
僕は、追跡しながらも、判明した能力値を参考にしながら、これからの算段を練った。




