恋愛ラプソディ(後編)
…思うことはいろいろありますが、何も考えてません。
今を生きると言えば、聞こえは良いけど、無為無策です。
んー、今回は行き当たりばったり、孤軍奮闘!?
低い植え込みは、飛び越え、高い塞がっている植え込みは華麗にサイドステップを踏んで避ける。
枝葉の僅かな隙間しか空いてない所は、空隙に合わせて体位を千変万化してすり抜ける。
スピードは落とさないのが追跡のコツです。
今、僕が着ている室内着は、ショコラちゃんからの貰い物、入学前の合宿で、場所と食材提供のお礼にと些か強引にショコラちゃんからプレゼントされたのです。
多分、合宿時に僕が着ていたTシャツ、短パンがショコラちゃんの美意識に触れてしまったらしいと見当がつきました。
名目はさておき、友達からのプレゼントは素直に嬉しい。
なので、傷つけたくはない僕のお気に入りなのです。
肌触りは良いけれど、防刃機能も回復修復機能も付いていない天然物なのです。
触ったときは、さぞやお高いのだろうなと直感したけれど、ショコラちゃんは、「私のお給料の範囲内で購入したので、お安くてアールグレイ様に申し訳ありませんわ。」と恐縮していた。
…そう?
僕…てっきりあまりの肌触りの良さに、かなりお高いと思い込んでしまったけれど、僕の鑑定眼も当てにならないなぁ。
普段高級品に慣れ親しんでいるショコラちゃんが、そう言うのであれば、そんなには高くはないのでしょうね。
でも値段は安くてもショコラちゃんが汗水流して働いたお給料で、僕のために選んで買ってくれたことが、とても嬉しい。
勿論、僕も、しばらく経ってから馴染みの貴金属店で購入した指輪に、とっておきの僕のオリジナル魔法術式を込めてプレゼントをお返ししました。
これで友達とのプレゼント交換成立です。
ああ…これでショコラちゃんとは、より絆が深まった気がします。
これは、親友に昇格してしまったかも?
この指輪は、なんと特別に原価割れの最大限値引きしてもらってシンプルなデザインながら、僕のお給料(依頼報酬込み)三ヶ月分の代物です。
高位貴族のお嬢様が普段身に付けて、最低限恥ずかしくない程度の品質には、なんとか引っ掛かる物だとは…思う。
「僕のお給料の範囲内だから、安くて申し訳ないけれど…」とショコラちゃんの心に負担を掛けないよう釈明しながら(嘘は言ってないもの)プレゼントのため、差し出した。
しばらくの間、ショコラちゃんは差し出した僕の掌を凝視していました。
そのうちワナワナ震えだしたので、…やっぱり、侯爵家のお嬢様には相応しくなかったかしら?と、恥ずかしくなり指輪を引っ込めようとしたら、指輪を僕の掌ごと両手でガシッと握り締め、ブンブン振り振り、受け取った後は、それを天空に掲げてワナワナと震えながら回りだして、とても喜んでくれた。
う…ん、そんなに喜んでくれたら、贈った甲斐があります…よね。
そんな訳で、意地でもアチコチ伸びている枝葉には引っ掛けはしないし、樹木にも擦らせはしない。
幸い月の加護の暗視により、僕には、夜間でも闇色の明暗ながらハッキリと物が見えている。
障害物を避けながら、左右に視線を振る。(ギラリ)
ん…見えました…逃走する男達は9人いる!(ハッキリ)
ぬ?…あれれ…ルフナとレイ、クール准尉もいる!?
… … …。
この場合、感情的に思考しても堂々巡りするだけで、結論は出ません。
男性的合理的思考に意識してシフトチェンジなのです。
古今東西、男は皆、スケベなのは承知していますが、それでも…ルフナが女性の裸を覗きに参加することは絶対にない。(キッパリ)
もしそうならば、僕が弱っていたときに、僕の色香に負けて襲っていたはずです。
そう…きっとそう。
あんなに密着したのに僕の身体に惑わず手も出さなかったあの朴念仁が、この僕を差し置いて、他の女の子の裸を見に行くなど絶対に考えにくい。
それとレイは真面目な良い子なので、クール君に誘われたとしても断り、逆に止めるはずです。
だから、レイが一緒にいる以上、クール君が今回、覗きに参加はあり得ないだろう。
知り合いの男子を見て、ちょっと、イラッとしたけど、合理的論理的に考えて結論を出してみました。
この3人は、アレクサンドリア様の采配か、エトワールの差し金で、覗き犯人を捕まえるに配置されたと推測します。(キラリ)
多分…合っている?!
すると…残るは6人の中に本犯がいる!




