此花咲耶
2人分70年近くの人生経験をして、僕は、世界はあたりまえで成り立っている事に気づいた。
休憩を終えて出発する。
変わらずクラッシュさんが先導だ。
次いでギャルさん、殿下、僕と続く。
この順番は何故なのか、分かる?
分かりやすいように、魔王を倒す勇者パーティに例えてみよう。
列の先頭に立つのは勇気のいる事だろう。
次々と敵が来るのだ。死亡率が一番高い。
クラッシュさんは殿下や僕達をかばう為、先導役を率先して買って出た。
まるで、義と仁を兼ね備えた勇者だ。
ギャルさんが二番目に来てるのは、自分を犠牲にしてまでも殿下の盾となる覚悟の表れだ。
その自己犠牲を厭わない慈愛の持ち主は、聖女だ。
殿下は誰よりも皆を見ている。
自分が守られている立場である事を知っているから。
必死で皆から学ぼうとしている。その真摯な姿勢と聡明さは、賢者だ。
ありのままを見ていれば、自然と分かることだ。
この世界は、あたりまえで成り立っている。
奇跡はない。
それはあたりまえのことで、当然のことなんだ。
だから、覚悟を持って挑めば、必ず願いは叶う。
誰かの為に堪えれれば、大切なものを守り抜ける。
命を懸けて、事を成そうとすれば、国をも動かす。
これは、嘘ではない…本当の事だ。
でもね、僕には皆の様な思い遣りや、決死の覚悟や、崇高な願いは無いんだ。
僕の立ち位置は、4番目。
臆病者の道化、トリッキーでピエロな、遊び人。
そんな僕にも、皆に比べれば自己中で自己満足な、ささやかな願いがある。
皆に幸せそうに笑って欲しい。
幸せそうに笑っている皆を見ると、少しだけ報われた気がして、僕も幸せ。
だから、守る。
仲間を守る。
都市民を喰らう喰人鬼は、許さない。
50階にたどり着く。
さあ、戦いのお時間です。