出会いは突然に…⑥
駆けつけて来たバーレイに、いきなり殴られた。
…グハッ
「ちょ…待て、止めろ!」
こんな場所で騒ぐわけにはいかず、殴り掛かってくる拳を、両腕で捌いているとバーレイが泣いていることに気がついた。
瞬間、ああ…コイツは、私の愚行を身体を張って止めに来てくれたのだなと分かってしまった。
…まったく、馬鹿なヤツだ。
…そう言えば、昔から、コイツはそういうヤツだったな。
昔の思い出がよみがえった。
…
…ガッ。
…
…イテ。
…
…ゴスッ。
…
…グハッ。
…
「痛、…止め…痛い、ガハッ…いい加減に…グヘッ…。」
…
…ガハッ。
ハアー、こ、この野郎、こちらが悪いと思って、抵抗しなければ、いつまでも殴りやがって…全力は出してないだろうが、かなり痛い。
「…いい加減にしろ!」
私の左のショートアッパーカットが、バーレイの顎先に炸裂し動きを止め、続いて、右のストレートが左頬に突き刺さる。
カウンター気味に放った拳がタイミングが良かったのかバーレイは、吹っ飛び倒れた。
倒れたが、そんなにダメージはないはずだ。
バーレイは、倒れたまま直ぐに驚いた顔を、こちらに向けた。
プッ、ハハハ、なんだ…その間抜けな顔は?
途端に泣きたいとも笑いたいとも言える感情が湧き上がった。
殴られた頬を摩りながら倒れたバーレイに手を差し伸べる。
…痛かったぜ。
だが、…完全に目が醒めた。
野薔薇の芳香に惑うとは、男子一生の不覚。
彼女に会ってから今までが、まるで夢路を歩いていたかのよう。
アールグレイ少尉、麗しの君よ、さらばだ。
私は、君よりもバーレイとの友情を選ぶ。
花よりも香しく、風に舞う花びらのように優雅で儚い私の可愛い妖精…さようなら。




