星の降る夜の話12
状況の変化の展開に理解が追いつかない。
俺一人だけで隠れていた植え込みは、いまや超密集状態だ。
暗闇の狭い植え込みの中に7人の男共がひしめき合っている。
此処は…暑苦しくも息苦しい。
風呂場の方からは、楽しげな女子の声が偶に聴こえてくる。
…
結局、クシャは着手しないまま、この場に隠れたので未遂にもならない。
それが良かったのか?良くなかったのか俺には分からん。
その後、見知らぬ高位貴族の少年と護衛の大男も隠れる為、入り込み、チチシリ問答をしていた士官候補生の二人組も逃げ込んで来た。
更にクシャを心配して探しに来たバーレイも、後から来る人の気配に、この植え込みに隠れに入って来たのだ。
…何故、皆んな、隠れるのか?
それは、男ならば皆心の中に下心を持っているからだろう。
これは、子孫繁栄は生き物ならば当然持つ自然発生的な健全な心の有り様だから如何ともし難い。
要は、どんな正当な理由があろうとも、或いは自己正当化して自己弁護しても後ろめたいものだからだ。
女子寮の風呂場前には、今やレイとクールが陣取っている。
まるで、トコロテンのようだ。
次から次へと押し出されて来る。
暗がりから見ると、風呂場前は内側からの明かりに照らされて舞台のように見えた。
すると、舞台からはけた俺たちがいるこの植え込みは、奈落か客席なのか?
…全く薬袋ないくだらない考えだ。
レイとクールの会話の内容を吟味するに、士官学校からの別件の依頼で出張って来たらしい。
…
もはや、植え込みから出てもいい気がするが、後から入ってきて動かないコイツらの動向が気になる。
それにレイとクールに説明するのも面倒くさいし…絶対誤解されるだろう。
俺自身も、こんなわけ分からん状況は説明出来かねる。
隠れている状態を発見されるのは避けたい。
知り合いならば、尚更嫌だ。
後から隠れたコイツらが何故動かないか分からんが、それぞれ事情があるのだろう。
とにかく俺は自分からは、動きたくない。
この場合、おそらく一番始めに動いて発見された奴が不利益を被る気がするのだ。
レイやクールに間抜けなこ奴らが見つかったら、陽動の囮になってもらい、俺はこの場から消えよう。
だから、オマエラ、早く動け!