表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アールグレイの日常  作者: さくら
アールグレイ士官学校入校する
596/617

第三王子と聖騎士は、夜の散策(中編)

 彼女に会いたいが一心で、海辺からしばし離れた島にある冒険者ギルド士官学校女子寮まで、われは空馬を飛ばした。

 モヤモヤとした気持ちを晴らすため、空馬に乗ったが、どうやらわれの本心は、そういう事らしい。


 だが、王家秘蔵の権能魔法まで駆使して、ギルドの防御膜を通り抜け、今宵、密かに彼女の前に颯爽と現れる算段をつけたというのに、その結果が、この性騎士と同一視されたのでは、たまらん。

 颯爽と格好良く、サプライズ的に彼女の前に現れたかったのに。


 …なにもかも、台無しだ。


 環境と立場から、普段疑心暗鬼になりがちな、われにとって、ダムダの欲望に正直な点は、…悪くはない。

 だが、それも場合によりきりで、今、この状況は、非常によろしくない。


 いや…最悪だ。

 何故にこんな状況になったのか?


 「殿下、ここは、わたくしめが、斥候のお役目をはたしましょう。わたくしの眼は、視力が5.0ですぞ。微に入り細に入りこの(まなこ)に、彼女達の赤裸々な美しさを写し出して、脳内記憶に永遠に留めてあげましょう。」


 畳み掛けるように興奮して言い立てるダムダのヤル気量が物凄い。

 いつもは覇気なく無気力感全開で仕事してるのに、今は、まるで別人のようにヤル気に満ち溢れている。


 …おいおい。


 奴の顔は興奮で眼が見開き、鼻息が荒くて、その息がわれの顔にかかるから、あまり近くに寄らんで欲しい。

 

 「ま、待て!しばし待つのだ。…少々勘案する。」

 われは、聖騎士を制止し、しばし考えた。


 …あまりにもデメリットが過ぎる。

 …もう、コイツ、首にしたいぞ。

 正直、コイツを送り付けた教会にノシ付けてに送り返したい。

 

 …考えると、ダムダとの今までの想い出がよみがえる。

 …

 …


 …


 …ああ…碌な想い出がないな。


 だがわれは結局、ダムダを送り返すをやめた。

 おそらく、この男は送り返されても、その正直さでアチコチ問題を起こし、周りに大迷惑を掛けるに違いない。

 ダムダも、大切な都市民の一人である。

 われが無理ない範囲で世話してやればよかろう。


 「…殿下、それとも初見は殿下にお譲りした方が良いか?ピチピチでウハウハですぞ。殿下もムッツリでありますな…ガハハハ。」


 そう…われが、世話してやれば…


 ダムダは、ニヤニヤしながら馴れ馴れしく肘でつついてきた。

 聖騎士は、神官であり、王族に触れても罰を受けることはない資格を持っている…実に残念だ。



 風呂場の曇りガラスにシルエットが映りこむのを見て、時折り、年若い女性の声が聞こえてくるのは、覗く気はサラサラないわれでも妙な気分になってくる。


 よし、離脱だ。

 護衛の聖騎士は嫌がるだろうが、首に縄をつけて引っ張ってでも、この場所から離れなければ。


 そう決めたところ、なにやら遠くから声が聴こえて来た。

 心臓が早鐘を打ち、ドキリとする。

 ダムダも気配を感じ取ったらしい。

 互いに顔を見合わせる。

 

 …拙い!われにやましいことは何もないが、王族という立場は疑われてもいけない。


 われとダムダは、隠れるために、近くの植え込みに飛び込んだ。
















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ