籠の鳥
午前1時…廊下に設置してある古い置き時計の鐘が一つ鳴った。
あまりにも静かで、秒針の動く音まで聞こえる。
時折り、風がビュービューと吹き、窓をガタガタと鳴らす。
カーテンをずらし、窓から外を見る。
空は黒雲が彼方まで続いているように見える。
その天から、黒い雨が落ちて来てるのだ。
周囲に灯りはない。
しばらくして、カーテンをキッチリ閉める。
振り返ると、ギャルさんが眼をパッチリ開けて僕を見ていたた。どうしたの?
「アールちゃん、大変…外の結界が作動しないよ。」
ギャルさんの表情が不安そうだ。
大丈夫、ギャルさん、想定内ですから。
二度と同じ手は通用しないと思っておりました。
だって、普通、対策は立てるでしょう?
ならば、こちらも。
「心配不要!我輩がいれば大丈夫。クラッシュ流槍術の妙技をご覧に見せましょう。」
クラッシュさんが突然、短槍を取り出して、演舞を始めた。
今までの戦いの場でのクラッシュさんを、又、思い返す。
……期待してます。クラッシュさん。
それはそれとして、こちらも準備を整えてる。
おそらく神気は、今回は使えそうにない。あの莫大な聖なる気は、神さまと繋がらないと流れて来ない。蛇口があっても水道管が塞がっていれば、水は出てこない理屈だ。
ホテルの周りは黒雲と雨により結界に閉じ込められた状態で闇黒領域となってるに違いない。
人間の自前の神気では量は知れている。
よって今回は、白家神道退魔術以外の全ての力を結集させる。あらかじめ用意していた装備品を点検確認してから身に付ける。
身体のアチコチに銃と刀を仕込んで行く。
今回は、前回のように簡単にはいかない。
魔法、銃、刀、最後は肉弾戦だ。みとれよ。
時計の鐘の音が響く。
ゴーン、ゴーン。
なり終わった時、窓ガラスが突如割れ、雨風が吹き込んできた。
来た!「search。」パターン真赤、1000以上。
すっかり囲まれている。
籠の中の鳥状態だ。
割れた窓から、黒い霧状のモノが室内に吹き込んできた。
途端に倒れ伏すクラッシュさん。
既にイビキをかいている。「見よ、我槍術の秘技をー、う〜ん、ムニャムニャ。」
……寝ている。
催眠ガス効果付きの黒い霧だ。
大丈夫。睡眠耐性ありますから。