聖騎士の思惑
全くラムディア・ラパ王子には、困ったものだ。
この王子には戯言を弄する癖がある。
若干15歳、成人したばかりで、まだまだ子供の精神を引き摺っている。
私を模範として、早く立派な大人になってもらわねば。
…私の評価に関わるからな。
私の名は、ダムダ・アカジュ・クルーゾ。
光りの教団においては、エリートであり、その有能さと信心で聖騎士を拝命されたが、些か有能さを発揮し過ぎたためか、嫉妬され、懇意にした女信者達に惜しまれつつ、王家に出向することになった。
ちょうど護衛に空きがあった第3王子付きとなった。
以来、王子の脇侍となり、付き従い訓育を施すも芳しくない。
王子は、よく詰まらないと呟いている。
人は、自己に正直に生きるべき…それが本分というもので、そこから逸脱すれば面白くないのも当たり前であろう。
そんな簡単なことすら、分からぬほどに精神が幼い。
だが人間真理とは自分で気付かなければ身につかない。
冒険者ギルドの士官学校祭に王子が呼ばれ、校内に足を踏み入れた際、またも王子は、戯言を私に申してきた。
…
なるほど…確かに護衛など私一人いれば充分だ。
それに、目前にいる王子に挨拶しに来たギルドのレッドの女も、私に力及ばぬまでも、戦闘力のレベルが高く、この女を、戦い勝ちて屈服させ、私に心服させ、その美しい身体を鑑賞して堪能する…想像したら、実に血が激った。
そうだな…ここは王子の戯言に乗せられた振りをしてやってもよい。
王子にも手伝わせて、大人の社会見学に参加させるがよろしかろう。
私からの成人祝いだ。
ここには、実にハイレベルな美術品があるとみた。
私は美術を愛するものであり、美しいものを愛でる愛好家である。
しかも戦い勝ち得た、艶めかしい美術品ならば、なお宜しい。
王子よ、私を見習い紳士たれ。
自分の欲望に忠実に正直に生きるは楽しい。
野に咲く花を手折るのも、また風情があって良い。
私の愛で、穢れた下界を浄化するは、聖騎士である私の使命でもある。
趣味と実益を兼ね、使命を全うしつつ、市井に咲く花々にも感謝され愛される。
まさに、この仕事は、私の天命の職であると実感している。
さあ、王子よ。
美しくも美味しそうな獲物を、探しにいきましょう。