復活のThursday④
祭りに訪問した王族を華麗に回避?した僕の学生生活は、順風満帆。
ああ…働かない生活って、本当に気分が楽です。
勉学に専念できるって、無類の贅沢ですと今では染み染みと解ります。
…学生最高です。
寄宿舎のガス、水道、電気、食費もギルド持ちです。ああ…なんて太っ腹な団体なんでしょう。
しかし、これはギルドが如何に士官を重要視してるかの目安になります。
お金の推移により、ギルド上層部の考えが分かります。
うんうん…僕達期待されてるなぁ。
期待は、やる気の上昇に繋がる。
なんて、分かりやすい構図。僕って単純です。
受けた恩は、返さなくてはならない。
世の中は、タダではないのだ。
ならば、喜んで将来仕事で返そうではないか。
だがまずは、せっかくだから仕事の事は忘れて勉学や生徒会活動に専念しよう。
成人してからの人生に、こんな機会は中々ありません。
…貴重です。
僕らは喜びを分ち合い、互いに切磋琢磨して、前へ進むのだ。
・ー・ー・ー・
休講日の次の日の朝、食堂に向かう渡り廊下で、急に呼び止められました。
「アールグレイ!ちょっと待ちなさいよ。」
呼び捨て?!
僕を呼び捨てにする人は、最近では、そうそういない。
親や師匠や先生ぐらいです。
若い女性の声だけど、どなたかしら?
新鮮な気持ちで、振り向く。
黄色のロールした髪を何本も垂らしたお嬢さんでした。
生意気そうな瞳でコチラを、真っ直ぐに睨みつけている。
美人と言えないこともない顔立ちです。
何処かで見た覚えがある。
勿論、同級生なんだろうけど、実は未だに僕は、全員を覚えているわけではない。
あれ?この子誰だっけ?…そして何用だろう?
同行しているペンペン様が、立ち止まった僕に対し、不機嫌そうに抗議の鳴き声を一声した。
ああ!そうだ…エミリーさんです。
例えは悪いけど、能力程度はエヴァの下位互換と表現できる、そこそこ優秀な方で、お祭りの際に王子と聖騎士の2人ずれの不良に絡まれ困っていた処に僕が出くわせ、救けて差し上げた方です。
あの時は、言葉を交わすまもなく、脱兎の如きスピードで颯爽と逃げだして行かれた方ですよね?
うん…あれは賞賛に値する見事な逃げっぷりでした。拍手したいほどです。
だが、なるほど…読めましたよ。
さては、あの時のお礼をしに来たわけですね。
うんうん…どうやら、彼女は礼儀知らずではなかったらしい。…感心感心。
僕自身も認識を改め反省する。
「あ、あ、アールグレイ!」
はい、なんでしょう?
「わたくしの名は、エミリー・タウンゼント・ハーニー!」
はい、知っています。今、思い出しましたが。
それより、僕を指差して来るのはお行儀が悪いと思います。
「あ、あの時は…せ、せ、世話になったわね。」
エミリーさんは、赤ら顔で、絞り尽くすように、そう言ったあとは、さもやり切った顔をされた。
「まあ、あなたもよくやったわ!アールグレイ、だから、あなたを認めてあげても良くってよ!この私のライバルだと言う事を!」
彼女は、鼻息荒くドヤ顔?をしながら、そう言い切って、僕の横を擦り抜けて、食堂方向へ立ち去った。
… … …
… …
…
あれ?僕、お礼言われてたんだよね?
ペンペン様が、再度不機嫌そうな声で小さく鳴く。
ああ、そうそう、僕達、朝ご飯を食べに行く最中でしたね。
僕らは、気を取り直して歩き出した。
彼女の言動は僕の胸中に波紋を投げ掛けたけど、その真意を慮ることは出来ない。
でも僕は、溜め息を一つついた後に自然と口角が上がった。
人生長くとも、理解出来ない新鮮な驚きってあるから、人生とは面白きもの。