祭りの後
授業を、上の空で聴き流していた。
窓から、外の景色を眺めている。
ああ、夏の空って、なんでこう果てしなく見えるのだろう?
人も社会も景色も変わっているのに、この青空だけは、前世と全く変わりない。
それが嬉しくも哀しい。
お祭りも無事?に終わり、夏季講習もひと月が経とうとしている。
活動範囲が校内限定で、勉強に専念できる環境なので、生活は概ね平穏無事です。
ああ…平和って、素晴らしいよね。
エヴァの株が学校祭を機に急上昇した。
大活躍だったらしい。
うんうん…友達として誇らしい。
元々、エヴァの実力は高かったけれど、控えめな性格からか、その能力に相応しい評価が追いついて来なかったのだ。
良かったと嬉しく思う。
相対的に僕の評価は下がったらしく、ショコラちゃんや獣人達からは、それが悔しいとの声が散見された。
うーん、僕、サボっているわけではないので。
周りの期待に応えられず申し訳ないけど、僕にとって周りの評価は関係ないのだ。
僕は、ただ粛々と自分の務めを果たすだけです。
この姿勢は、前世から変わらずに踏襲されている。
世情とは移ろいやすいもの。
その度に一喜一憂しても、仕方無し。
勝手にすればよろしく、僕も勝手にするし。
気分は、砂漠や森の上を吹き抜ける風の如しです。
…
件の王子様や聖騎士とは、祭りの際、初遭遇から会うことはなかった。
表に出ず避けた甲斐がありました。
実は、僕に身体的に近似しているエヴァに、接待時、御下問があったらしいのだ。
…お前に似たこんな女を知らないか?と。
エヴァは、僕のことだとピンと来たらしいけど素知らぬ振りして、知らないと答えてくれた。
ありがとう、エヴァ。
…それにしても、しつこいな。
ああ、どうか僕のことは忘れて下さい。
彼らとは元から住む世界が違うので、もう会うことはあるまいにと、もはや気持ち良く昼寝する猫のように安心しきってますが。
…
歴史の授業をしてくれた先生は、魔法でも碩学であり、圧縮詰め込みしてくれた爺様で、カンパネルラ先生と言うらしい。
なんだか星々を彷彿とさせるお名前です。
今日は、魔法の歴史を圧縮して脳に入れてくれてるから、こちらも構えずに海のような心持ちで受け入れよう。
…この学習法も慣れることはないし変わらずダメージは喰らいます。
けど経験により、慣れないことが慣れました。
最初から分かっていれば、如何様にでも対処はできます。
事前に情報をある程度入れて置くのもダメージ軽減に有効らしい。
そして授業後は、速やかに寝るのが良いのも分かっている。
なので、今日は、もう昼休みに出来ることは済ませました。
今日、あと寝るだけ。
だから、今のうちに、おやすみなさいと言っておきましょう。
睡眠とは心身を回復させてくれる、身近で手軽な回復法なのですよ。