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アールグレイの日常  作者: さくら
アールグレイ士官学校入校する
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お祭りTuesday⑧

 僕が、絶体絶命たる危機に遭遇してから呼び出しに応じていた頃、エヴァは、僕が実は出場することになっていた王族御臨席の拳闘大会で、僕の代わりに出場し優勝、はたまた妨害ありのオリエンテーリングでも最多得点を獲得し優勝した…アチラコチラと使われ相当忙しかったらしい。

 彼女は、元々様々な基礎能力が高いから、あらゆる方面をカバーできる。

 使う側からしたら、相当に使い勝手が良い人材です。

 王族の接待まで卒なくこなして、気に入れられ、一躍脚光を浴びたと後から聞きました。

 修練して貴族の礼儀作法まで身に付けていたらしい…その姿勢には頭が下がります。

 でも、それは後から聞いた又別の話し。




 今の僕は、機嫌悪く顰めたツラしたペテルギウス学校長の面前で、直立不動でお言葉を待っている。

 学校長の両隣りには、教頭兼魔法担当教官の爺様と数理担当のミリオネラ教官が立っていた。


 校内に居た聖騎士の難癖から逃げ出すことができた僕は、学校長の元に急行したのだ。

 占いの館から向かう途中、エミリーさんを見掛けて寄り道した結果、遅れはしたけど、充分許容範囲内だと思います。

 ですが多少…後ろめたい。

 それにギルドの諜報機関から密告され、バレてる可能性もある。

 両隣りの教官達も神妙な顔つきで、学校長室内は緊迫した空気が流れている。

 もしかして遅れて来た僕に対する処分を検討してる?可能性は低いが、全く無いわけではない。

 そして僕を至急に呼び出す用件とは何?

 僕の依頼料は高いよ!と啖呵を切りたいが、ペテルギウス学校長の顔が怖くて言い出せない。


 「…王子がいなくなった。」

 苦虫を噛むような顔つきで、学校長が呟いた。

 ハッ?という顔をした僕の顔を見て、補足説明がミリオネラ教官からなされた。

 「御臨席された王族は二人、第一王子と第三王子、このうち第三王子が癖者でな。御年15歳、成人なされたばかり。やっかいなことに校内に入ってギルド護衛に引き継いでから逃げ出した…現在行方不明だ。」

 

 …なるほど。

 これは、ギルドの失態です。


 いや、一番悪いのは逃げ出した悪ガキ王子です。

 だが、行方不明という事実と、瑕疵は王子にあるとはいえ、王子様に何かあれば、責任を問われるのは担当した護衛ギルド員と、その責任者であろう。

 今回の場合、その責任者とは、すなわち、ペテルギウス学校長ですよね?

 学校長からしてみれば、まるで、交通事故に遭ったようなものです。


 うんうん…偉い人は大変だなぁ。


 他人事のように考えてたら、ミリオネラ教官から、又も補足説明が入った。

 「今回の祭りの主催は、夏季講習の生徒会。すなわち責任は生徒会役員にある。もし王子殿下に何かあれば、その処分は、貴族なら降格謹慎、平民ならば市中引き回しの上、打首獄門が順当…。」

 …

 ん?…!!

 僕?…僕なの?僕とエヴァが打首?

 確かにミリオネラ教官の言う通り、今回の祭りの主催は、生徒会です。

 信じたくない認識が、浸透する。


 あわわわ…大変じゃん。僕、大ピンチです。


 僕が心中慌ててる中、重厚で静かな雰囲気に、ボソッと学校長の呟きが聞こえた。

 「実に残念の極み、アールグレイは、わたしが先に目を付けてたのに…これから鍛えに鍛え、卒業時に完膚なきまで叩き潰すのを楽しみにしてたのにぃ…!…言い残すことはあるか?」

 

 学校長の呟きから、内心を知り慄くも、もしかして、至急で僕を呼び出したのは、学校長の温情で処分される前に、言い残したことを聞くこと?

 或いは、処分前に、僕が逃げ出すことを察知して確保するためとか?


 僕は、溜め息を一つ長くついた。

 ここまで聞いたところで、僕はその悪ガキ王子の見当がついた。

 「…是非もなし。要は、その王子が無事に見つかればよろしいのでしょう?」


 「…出来るのか?」

 ペテルギウスが、眉を顰めた。


 僕の察知能力の範囲は、精密ならば1km、広範囲に薄く伸ばせば100kmは、いけます。

 校内ならば、充分カバーできる。

 しかも件の王子様とは、先程接触済みなので、バージョンアップしてレベル3.0になった僕の探知魔法で個人特定は可能です。

 何たる不運で何たる幸運。

 まさに禍福は糾える縄の如し。

 僕は、ペテルギウス学校長の問いに答える代わりに魔法を詠唱した。

 「…search!」

 

 魔力波が、僕を中心に四方に広がる。

 感知した光景が眼前に瞬時に展開され…いた!

 野外店舗で、お好み焼きを呑気に食べている王子を瞬時に知覚する。

 …

 即時に、学校長に伝えて、捕縛部隊を向かわせもらって、この件は事なきを得た。

 要は、王子の逃亡は、なかったことになったのだ。


 楽しみの途中で拉致され、式典に臨席されることになった王子様は憮然とされていたそうだ。

 これは、後でエヴァから聞いた話し。


 僕は、件の王子様には会いたくもないので裏方に回り幾つかのトラブルをおさめた。

 エヴァを含め役員3人は、表の代表としての顔出し、スピーチ、王族の接待、競技の出場などなど活躍してもらった。

 





 …







 

 こうして、危難を乗り越えたダイバ祭は、夕方頃、最後にアレクサンドリア嬢の祝辞の言葉を持って締めて、無事に終わりを迎えた。


 これは…皆無事だったし、結論から言って大成功ではないだろうか?

 でも、祭りとは主催者側ではなく、参加して楽しみたいもの…もうこりごりです。


 あー、疲れた。

 



 




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