未知との遭遇②
対峙してる圧が凄い。
互いの制空圏がぶつかり合うガリガリとした異音が聴こえるような感触さえ感じる。
互いに引かない…引けない…引いた方が負ける、そんな気がする。
僕の後ろには、エミリーさんがいる。
…
退くわけにはいかない。
目は口ほどにモノを言う。
瞳から、この男の内側を覗き込む。
名も知らぬ不快な虫が近寄って来たから踏み潰しまてやろうとしたら、反撃されて少し驚いた程度に、僕らを侮ってくれている…。
…
その武力に比べて、なんたる卑小で拙い未熟な精神をお持ちなのか…器量の狭さ小ささを感じる。
侮られて嬉しい人などいない。
武術と人格は比例しない見本を発見しました。
浅はかな人類の期待可能性の底を見た気分。
…落胆。
僕は、様々な不愉快なる気分を吐き出すように…一度溜め息を長く吐きだした。
一旦気持ちをフラットにするのだ。
落ち着かせるとも言う。
…
ああ…要するに、目前のこの男を僕は、人よりも強いゴリラだと思えばよい。
どうやら、このゴリラは少しばかり人より力が強いことに驕り、人間よりも上位の存在であると勘違いしているらしい。
間違いは正さなければならない。
なによりゴリラに負けるなど、人たる者としての矜持が許さない。
この気持ちは人の尊厳を守りたい故なのか分からないけれども、他者の心情に敏感に反応しながらも、リトマス試験紙のように染まらず、今の自分の立脚点から身じろぎもしたくない。
ふむ…これが不動心であるのかな?
だからして、今の僕の心情は、この男への憐れみさえ感じるのだ。
もののあわれ…はたまた憐憫の情である。
(如何に自分が強くとも、相手を侮るなど、武術家としてはドン底。三流、四流。クククッ、油断してる隙を突いて驚かしたれや!)などと、お師様なら言うかもしれない。
ああ…この様な男をゴリラに例えたるは、ゴリラに不敬であったかもしれない…ごめんなさい。
この様に、ザックリと思考したこと、通算で、およそ0.1秒、僕の胆は座った。
許せないと思うのは、僕の自由。
…
「…search。」
魔力波を薄くして飛ばす。
パターン赤。
戦闘力3000…全力出した僕のおよそ2倍の数値。
…
むむ…相手が誰であろうと関係ない。
僕は、直接見聞きした、行動で、その為人を判断する。
僕の目には、貴族がギルド士官学校の校内に侵入し、複数人で一人の婦女子に危害を加えようとしている状況が映っていた。
うら若き乙女を多数で襲う慮外者め!
破廉恥な、不埒にも程があります。
天に代わっての裁きを受けよ!
「刮目して見よ!」