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アールグレイの日常  作者: さくら
アールグレイ士官学校入校する
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会議で踊れ(後編)

 だが実は、アイデアは何もない。

 突出していた二人を止める為に、適当にそれらしきことを言っただけです。


 …


 …不実でしょうが、これは未来の僕と皆の危機を防止する為の緊急避難というものです。

 どう?彼女らの危険な話しに釘を刺してみました。

 だって誰かが火中の栗を拾わなければならない。


 「ホウッ、するとアールには私達を越えるアイデアがあると。…そう言うわけだな?」

 しばらくして、エトワールの感心するような、続いて確認の声にドキッとする僕。


 んん…いいえ、何もありませんが。


 エトワールのキラリと光った期待する視線に、取り敢えず、目を逸らす。

 瞳を覗き込まれたら、政治的な生業に百戦錬磨なアレクサンドリア様や、天才のエトワールにバレるかもしれないことを危惧してのことです。


 あ、あ、あー、どどど、どうしようかなー?


 目が泳ぎ、口元をモグモグさせる。

 今の僕、大変不自然?

 

 その時、隣りから、グ〜という小さな音がした。

 隣りを見ると、テーブルに突っ伏したエヴァが、そのままの姿勢でコチラに顔だけ向け、その頬が紅く染まっている。

 「アールちゃん、私、お腹空いたみたい…。」

 もしかし、今の音はエヴァのお腹の音?

 

 「あー、模擬店は、どうかな?」

 そう言えば、僕もお腹空いている…昨日の朝から、何も食べてないし。

 …お好み焼きが食べたいな。

 安直な発想ながら、苦し紛れの提案です。


 「… …模擬店?…模擬店とは何だ?」

 当初、反応の悪さに反対されたかと思いましたが、知らないだけのようだ。


 あれれ?この世界には、模擬店は無いのかな?

 そう言えば、学生の文化祭の時も、模擬店は出店していなかったと、記憶を掘り起こす。

 真面目な文化的な催しに終始して、遊び心がなく全然面白くなかった。


 ならばと、模擬店について説明した。


 最初、興味深く聞いていた2人だったが、終盤では落胆した表情になった。

 「それは、店を構える資金もない低層の者が、道端に商品を並べて売ったり、車付きの移動販売車の類いではないか?(誇り高き)私達が、その様な(下賤な)者達の真似など、できようはずなどない。」

 エトワールの反対理由の説明に、アレクサンドリア様が鷹揚に頷いた。

 因みに括弧書きは、僕が勝手につけました。

 だってそんなニュアンスの言い方だったから。


 それにしてもエトワールも、丸くなりました。

 昔だったら、氷河期のような目付きと嫌々がありありと分かる軽蔑しきった表情で、こき下ろすように駄目だしを出したに違いない。


 しかし、彼女は誤解している。


 場所は空き教室を使っても良いし、模擬店に、格差、階級、生まれ、とかは関係ないのだ。

 売っている物も、値段の張らない正直たいしたものでもない。

 ただ、最低限、僅かのお金が必要だ。

 皆が、製造、販売の素人、協力して仮想空間を作りあげ、楽しむのだ。

 一種のお祭りです。

 そこに現実の身分を持ち込んでは興醒めです。

 不粋とも言う。

 無礼講ですから。

 それだけに身分に取れわれない個人のセンスが問われる。


 鯛焼きを思い浮かべながら、その様なことを、前世の記憶を頼りに、具体的に説明した。

 説得ではない。

 お腹空いたので、模擬店で出来る食べたいものを、次から次へと説明しただけ。

 嫌なら、貴女達は、食べなければ良い。

 ああ…焼きそば食べたい。



 僕のお腹が鳴り、他3人の喉がゴクリと鳴った。




 会議の後、皆んなで、お昼ご飯食べに行った。

 

 

 









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