授業Monday⑥
knockし、扉を開けると、紅茶の香りがほんのりした。
円卓に座れし、麗しいと形容されるような容姿をした公爵令嬢が紅茶を嗜んでいた。
…
一見して圧縮学習法の副作用を受けてないような余裕ある所動は、見惚れるほどの優雅さです。
もしかして貴族って、アレに慣れて耐性があるとか?…だとしたら大したものです。
僕なんか、只今、絶賛青息吐息状態ですよ。
今世の僕の身体は、魔法適正は高いけれども、他は哀しいほどに低レベルなのです。
ちょっとだけだけど、アレクサンドリア様に羨望の念を抱く。
…が、良く見ると指先が震えていることに気がついた。
表情も優雅さを装っているけど、良く見ると耐えている節が見え隠れしている。
もしかして、内心のキツさを表に出してないだけ?
それでも僅かに漏れ出てるのは相当キツいであろうことが窺えた。
…まあ、アレクサンドリア様ったら。
歳若いながら、貴族として恥ずかしくない所作を保つ努力を懸命になさっているその姿が、僕には健気に映りました。
僕の中で、アレクサンドリア様の好感度が上がった。
ただ気位が高いだけの人ではないのが分かったから。
まあ、だからといって僕は我慢はしないけどさ。
それは、僕自身は人は正直が一番だと思うから。
アレクサンドリア様を尊する気持ちに嘘はないけど、やはり僕には、貴族より体裁ない平民のほうが適していると思うのです。
フフッ、選択の自由…素晴らしきかな。
優雅に紅茶を嗜む風を装うアレクサンドリア様のその横で、エヴァが、円卓に突っ伏しているのが見えた。
ああ、まるで…屍のようだ。
護民官としての義務感から力を振り絞り、ここまで辿り着きて力尽きたのであろう。
ピクリとも動かない。
精も根も尽き果てた姿が、そこにあった。
それは見ていて清々しいほどの力尽きた姿だった。
まさに、今、僕も力尽きそうな状態だから、先達のその姿に意気を感じました。
そうだね…エヴァ、僕たち、庶民で平凡な能力ながら、立ち上がりここまで来るなんて、良くやったよ。
…仲間意識が芽生えました。
その後、息を吹き返したエヴァを交えて、生徒会役員による小会議が開かれました。
それが、今後の夏季講習の行末を決めることなったのです。