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アールグレイの日常  作者: さくら
アールグレイ士官学校入校する
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授業Monday③

 昼食、食堂にて対面に座ったエトワールの唐揚げ定食を、揚げたては美味しそうだなと思いつつ見てたら1個くれた。

 あ、そんなつもりでは…と、断ろうとしたら、ニコニコしながら、イイカライイカラ食べてみてと渡されてしまった。

 あまり意固地になって断っても、ぎこちなくなってしまう…よって和をもって貴しとした。


 …ホカホカで美味しそうな唐揚げを見つめる。


 エトワールって、もしかして実は…良い人?

 パクりと食べる。

 あわわ…唐揚げの美味しさに、思わず相好を崩す。

 隣りで、ラピスが「うちの姫様、ちょっとチョロインですけど…。」と小声で言ってるのが聞こえた。


 フッ…何とでも言うがよいわ。


 僕に美味しい唐揚げをくれる人は良い人です。

 そう言えば、彼女は、チョコパフェも僕にくれたこともあったし…言動も最近は、まともだ。

 勉強も教えてくれた。

 子供にも慕われていた。

 動物も好きらしい。

 …

 あれ?悪いところ、ないや。

 …

 …

 …

 おお…僕は、今までエトワールのことを、どうやら誤解していたようだ。

 天才で金持ちを鼻に掛けた人を人とは思わぬ、独りよがりの少女好きの変態だと長年誤解してました。

 何故誤解してたのだろう?

 先入観って、本当に怖いなぁ。

 これからは、偏見なき曇りなき(まなこ)で見よう。


 唐揚げをモグモグしながら、チラッと正面を見てみる。

 …

 エトワールが上気した顔で、コチラを食い入るように見てました。

 あ、あれ?ちょっと怖いかな…?

 モグモグ…ゴックン。


 僕が、貰った唐揚げをモグモグした後、呑み込んだら…エトワールが幸せそうに破顔した。

 その頬が興奮したように紅くなって、瞳が潤んでいる。

 …

 うん…人の幸せは、人それぞれだからね。

 多様性、多様性。

 …唐揚げに免じて見なかったことにしよう。


 僕の中で、エトワールは、少し変わってるけど基本的に良い人とインプットされた。




 ・ー・ー・ー・




 午後の授業も座学です。


 …歴史らしい。

 眼鏡掛けた白い髭と後ろ髪を腰まで垂らしたお年寄りの教官が現れた。

 その身姿は、ザ・魔法使いです。

 挨拶もそこそこに直ぐに授業が始まる。


 掠れた低音のお声が、小さいのに教室の後ろまで届いた。

 これ…言霊を乗せてるね。

 内容が魂に直接響いて来る。

 一説によると、歴史とは全ての学問を網羅した万能の学問だと言う。

 もっとも、数学とか物理だとか諸説ありますが。

 多分、最初に歴史で共通認識させ、総覧に目を通させる段取りではなかろうか。


 案の定、時系列に従って、諸学問が人類の歴史と伴にして高速で意味列が流れていく。

 脳内で文字が大きくなり意味を認識すると小さくなって端へと流されていく。


 何これ?圧縮学習?


 聴いてるだけで、圧縮された情報が侵入して爆発していく。

 身体中が情報で埋め尽くされ、反響で耳鳴りがして、もう一杯一杯です。





 …





 …






 …







 …





 …








 …

















 終了の鐘が鳴り、老教官は頭を下げると教室から出て行った。

 …終わり…らしい。

 

 風が窓ガラスに当たりガタガタと鳴った音で我に返った。

 窓外を見れば、外は薄暗くなり始めていた。

 時計を見れば、定時をとっくに過ぎている。

 …

 一瞬で、無限が過ぎ去った奇妙な感覚と、体内が情報過多で、溢れ落ちそうです。


 各人それぞれが黙って、寮の居室へと帰っていく。

 その日は、食事も取れずにベッドで横になった。

 体内に入れた情報は咀嚼しなければ、理解できず栄養にはならない。

 

 その後、僕は知恵熱を出して寝込んだ。


 次の日も、僕は知恵熱が引かず、休んだ。

 

 後で聞いたところによると、ほぼ全員が熱を出して休んだらしい。

 





 

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