授業Monday②
授業は、休憩を挟んで投資の話になった。
今世では、投資は儲からないのが常道。
ハイリスク・ノーリターンです。
文明崩壊後、各階級により所有制限枠が各法人・個人に課された。
それでも、僕から見れば、制限額は、手が届かぬほどの天空の高さに感じるけども。
でもこの制度により、富の集中は緩和され、投資は貴族の嗜みとされ、ノーリターンにも関わらず、政府に返納するよりかはと余剰分は積極的に、雲の下の庶民に投資され社会に還元された。
庶民にとっては恵みの雨で、富が上手く社会を循環している。
もちろん、これには別の抜け穴的な貯める手法があり、グレイなところでは超高級な調度品・家具、建物、貴金属などの物に変換したり、一族の名義を借りたり、ブラックなところで裏口座を購入したり、秘匿場所に隠し持ったりする。
あまりにも酷いと真実を見通す[王の鏡]により、摘発されて、貴族なら降格と罰金、平民の富豪ならば全財産没収の上、打首獄門又は追放若しくは労務に処せられる。
だから、貴族でもなく富豪でもない、今までの僕ならば、投資などは全く関係ない話です。
何しろリターンが何もないもの…投資するはずがない。
ところが、これからはギルドのレッドは在職中は、貴族の最低位たる騎士と同義と看做されるから、投資を説明され、奨励されてしまったのだ。
…なんたることだ。
士官候補生の皆さん含めた元から貴族の方々は平然としていた。
当たり前の話しなのだろう。
だが僕を含め、平民、殊に獣人の皆んなは、寝耳に水、口を開けてポカンとしている者さえいる。
ラピスなどは全く理解できないのか首を捻っている。
分かる…気持ちは良く分かる。
僕らは、生活費を稼ぐのさえ苦労しながら、ここまで来た。
必要資機材は高いし、自営業だから必要経費は自分持ちで請求出来ない場合もままある。
それなのにノーリターンな投資とは何事か?
しかし、僕らは冒険者だから、投資は最初、最低限のお賽銭程度の金額で良いと説明された。
な、なるほど、お賽銭ですね。
神社に投げ入れるお賽銭や緑の羽募金と考えれば腑に落ちる。
それならば、前世でもやっておりました。
…驚かせないで下さい。
そして、これは強制ではないからと説明された上で、投資先は、ギルド債を紹介された。
一口、10万イエンで購入すると利率は零だけど返礼品や数々の特典があり、お得だという。
ローリスク・ローリターンです。
更にお得なのがギルド株だという。
説明は、具体的投資手続きに及んだ。
…
…
…
最終的に、少額ながら、ギルド債と株を購入した。
慣れている貴族のショコラちゃん達に相談したら、少額でも購入した方が良いと言われたから。
自分で分からないことは、有能な友人に頼る。
これは恥ずかしいことではないはず。
結局、午前中は、計算とか投資とか、数字の話しで終始してしまった。
実に平和な時間でした。
戦いなど、無いにこしたことはない。
ああ…毎日、こうであれば良いのにな。
授業終了の鐘が鳴った。
正午を知らせるように、ちょうど僕もお腹に空腹感を覚えました。
うん…僕の腹時計も正常です。
空腹で、お腹が鳴らないうちにショコラちゃん達を誘って食堂に食べに行こう。
だって…お腹が鳴ったら恥ずかしいもの。