表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アールグレイの日常  作者: さくら
アールグレイ士官学校入校する
525/617

山河あり、草木深し

 炎滅斬…カッケーです。

 ニヤつきながら帰路に着く。


 クールな顔を心得るも、口元からニマニマが止まらない。

 実に厨二病を擽ぐる技名です。

 僕は、自分が女の子である自覚はあるけど、男の浪漫も分かるのですよ。

 これは前世の記憶持ちの影響ですね。

 しかし、咄嗟に名前付けたけどシンプル過ぎたかも…?

 魔法と抜刀術の合わせ技だから、魔合抜刀炎滅斬では…?

 うん…いまいち、ピンと来ない。

 あとで、追々考えてみよう。

 

 名前はさておき、新技は、僕が前進している(あかし)でありますから、検証、実験、は成功でしたね。

 成功に鼻高々、精神が高揚してますれば、気分が良いであります。

 


 しかし、この新技、対多数への一撃の威力は派手で凄いけれど、連発は出来ないし、切れ味良すぎて効果遅いし、その後もヘロヘロのパーで、使い勝手悪すぎです。

 それに実に熱いですわ…身体の芯から来る地熱と周りの熱風で、コンガリローストサンドされそうで、冬に使えばちょうど良く暖かいかもしれません。

 うーん…いろいろ問題あり。

 しかし、男の浪漫は、ロマンで良いとしても、現実を見て、実務上必要な特徴を網羅するとなると、地味でも連発出来て、汎用性のある使い勝手の良い技を増やしたいもの。


 今は学校への帰路中。

 先導は、ルピナス准尉に頼んだ。

 彼女は、ジャンヌ班にいて、初めて怪異を退治することが叶って意気揚々です。


 逃げ出した怪異ハエは、少数に見えましたが、それでも100匹はいたらしい。

 その生き残りは、待ち構えていたジャンヌと班員によって、全部殲滅されました。

 これにて任務完了です。


 ジャンヌさん、良くやりました。

 Good jobです。


 僕は、夜中に騒音を立て続け、安眠妨害するものには容赦しません。

 誰しも許せないことはある。

 疲れ果てて、布団で寝てる真夜中に、いつまでも騒音を撒き散らす輩は、焼却処分です…フフフ。

 ですが、内心ニコニコ顔の僕とは裏腹に、ジャンヌは浮かない顔です。

 事情を聞いたら、あまりの弱さに手応えが無かったとのことで、経験値の足しにはならなかったらしい。


 あやや、流石です。

 敵手に、手応えを求めるとは、僕には考えつかないような発想です。

 僕なら、敵ならば弱いほど良いし、強ければ逃げます。

 戦って敵わないならば、僕なら最初から戦わない。

 無駄な争いはしないのです。

 超効率的でしょう?


 でもそれは、ジャンヌの尊い志を否定するわけではない。

 千差万別、人はそれぞれ違うのです。

 それを平等の名のもと一括りに同じく扱うのが間違っている。

 皆んな違う…それでいい。

 互いの違いを認識しながら、互いに尊重し合うのが肝要なのではないでしょうか?

 同じ作業をするとお互いに分かり合い、尊重する心が生まれて仲良くなります。

 その証拠に、ジャンヌ班の士官候補生達は、このイベントから急に仲良くなった雰囲気を醸し出している。

 そして、ジャンヌに一目置いている態度が丸わかりです。

 更に、ジャンヌと友達の僕への態度も軟化している。


 嬉しい…流石ジャンヌです。


 この周りへの影響が大なのはジャンヌの特性です。

 その誠ありきの善性と頼りがいのある強い魂、それが真剣な眼差しや態度、思いやりの言葉の端々から分かってしまうから。

 きっと、これからもその魅力で立派な指揮官になるに違いないけど…だとしても僕らは友達だよね?


 ジャンヌの回答は、聞かなくとも分かっている。


 ああ…それに比べて僕の班になった若者達の態度は、何かよそよそしい。

 僕としても仲良くなろうと、甲斐甲斐しく世話したつもりです。

 僕以外、全員貴族ですから、気も使うというもの。

 だって彼らに何かあれば、僕の首が、実際に飛んでしまうかもしれないのだ。


 始め、僕はクシャ准尉との騒ぎから、全員が、平民や獣人に対し、傲りと偏見を持っているかと思い込んでいた…でもそれこそ偏見ありきの先入観で、彼らは僕に対し紳士的でした。

 途中からは、まるで僕が何処ぞのお嬢様かのように恭しく接してくれるまでになり、もしかしたらこのまま最後には仲良くなれるかな?などと大いに期待してたら…怪異ハエ討伐後には、期待していた和気藹々と仲良くしてくれる雰囲気は皆無で、…引かれたような態度に一変してました。


 …何故?!


 いや…普通には会話してくれる紳士的な良い子達なのだけど彼らの目からは、仲間うちの気やすさは感じられない。

 だとしても、仲間はずれにされてる感じはなく、僕を侮るような態度も皆無で、皆が皆、考え込んで、僕を遠巻きに観ている印象なのです。

 …なんだか非常に座りが悪くて気まずい。


 クシャ准尉からは、決闘のケの字も言い出して来ないのも、なんだか気になります。

 このまま、なあなあにならないかな?

 とにかく、ジャンヌ班と合流するまで、僕の班は、お通夜のような静けさでした。


 ジャンヌ班の子達の朗らかな態度とは、明らかに違うのは明白で、きっと、僕は何処かでコミュニケーションに失敗したのだろう。

 原因は何だろうか?まるで覚えがない…。


 あまりにも過保護過ぎたかしら?

 少しでも怪異と触れ合ってもらえば良かったのか?

 しかし、もしそれで貴族のエリート様達に何かあったりしたら、僕の首が飛びます。

 だから僕の保身と言うか…方針に間違いはないのだ…うんうん。


 それにしてもコミュ力に関しては、僕、前世から、まるで進展はないなぁ…。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ