百鬼夜行
…来た。
ブンブンブン、パラリラパラリラ
何が、パラリラだ…お前らの頭がパラリラだ!
自己の頭の悪さを、音で吹聴してるというのか?
カラフルな光りを出す集団の羅列が目に付く。
眼を凝らせば、光りの中、二輪に人擬きの上半身が融合したかのような形が見える…一部には四輪もいる。
おどろおどろしい火車の形と言えば、褒め過ぎだろうか?
無機物と有機物が不規則具合悪く融合して、腐りて醗酵し噴き出したガスがメラメラと燃えている。
近づいて来るほどに悍ましい。
まるで、百鬼夜行です。
それら怪異が、後から後から湧き出してくる。
光りの奔流の大行進です。
埠頭が、先の方にまで、下品で悍ましい光りと騒音で埋め尽くされている。
…そして、音がうるさい。
怪異とは、腐りきった魂が、己れが放った影響や、利用した概念が、死後に返ってきて融合し魂を乗っとられて成り果てた姿。
怪異にとっては、この世こそ地獄なのかもしれない。
怪異の材料となりし人の意識は、もう無いだろうが、自業自得としても懲役5000年は、ほんの僅かだけど憐憫の情も湧きます。
ここで終わらしてあげるのが優しさという気がする。
…
士官候補生達が緊張している雰囲気が伝わる。
中には、後退り逃げ腰の者もいた。
だが、緊張することはないと言いたい。
この怪異は、集団で行動しなければ生存できぬ程に、悲しいほとに精神が弱い。
一撃喰らわせれば、直ぐに逃げだしてしまうのだ。
厄介なのは、その速さにより逃げおおせてしまうこと…そして又増殖して湧き出すのです。
不愉快な光りの洪水を前にして、僕は呟く。
あなた達、今回は運が良かったデスね。
僕は、騒がしいのは大嫌いなのだ。
お祭りや街中での喧騒ならいざしらず、就寝時間中に、五月蝿くされるは非常なる不愉快著しく、許せないと感じる僕の心の狭さよ…神よ、赦したまえ。
輪廻の輪から完全抹消して差し上げます。
それが、数多の人の幸いなのです。
二度とこの地に湧くことの無きようにと…僕は祈った。
掌を合わせて、合掌する。
それが合図のように、僕が編み出した魔法文字が浮き上がり、輝きを増しながら、魔法陣を起動させた。
準備させていた無数の魔法陣が、光りながらクルクルと回りだす。
うん…僕自身は地味めだけど、魔法陣や散りばめた魔法術式が輝いて流れいく様は…派手だな。
きっと魔法と僕、併せてプラスマイナスゼロだから、帳尻は合うのかも。