雨の降る頃❷
入学式を経験し、今年赴任して来た学校長の恐ろしさを痛感した。
なんだ!あの学校長は…!?
噂には聞いていたが、暴虐のペテルギウスの名は伊達ではないと言うことか!
正確に言うと、学校長の格付けは将軍クラスなのでペテルギウス大佐は学校長代理との役職となったらしいが、現に学校長がいない以上、学校の長には違いない。
…抗議を控えて良かったと安堵する。
私の見識、判断に間違いなかった。
これは勇気がないとか、臆病であるとかの問題ではなく、優れた状況判断の賜物であるからだ。
ペテルギウス大佐は、辺境伯爵を叙勲されている貴族一族の一員だが、所詮は人族とは異なる巨人族の出身、本来の貴族より劣る。
察するに、脳筋な巨人族の頭では、武力や実力が抜きん出れば、平民や獣さえも同じ人である認識して良いと思っているかもしれん。
それは、明らかに間違いだが…地道にその間違いを正していこう。
先ずは、小さな獣人に狙いを定めた。
弱そうな犬が遅刻してきたのを契機とし、煽動して犬を皆んなの総意として責めたてる。
正義の立場から、弱みを握って一方的に責め立てるのは、なんと気分の良いことか。
私は、常に安全、安心な立場から、自分より弱い者を見定めてから攻める。
…卑怯とは思わない。
これは戦略であり、戦術なのだ。
それに高貴なる貴族たる私に、もしものことがあっては取り返しがつかない。
私は、幾らでも替えが効く平民ではないのだ。
大切にされなければならない。
君らとは、違うのだよ。
責め立てて、自らレッドを辞めさせて、追い出してやる。
ケモノが同じレッドの制服を着てるなど我慢ならん。
ホラホラ、辞めてしまえ!
まだか!
ケモノに相応しい汚い場所に帰れよ!
目に映るだけで汚らわしい。
ハハハ、ケモノの癖に泣いてやがる。
そろそろ潮時だ。…言ってやる。
お前なんぞ、レッドの面汚しめ、出ていけ!二度とここに来るなと。
…コツコツと靴音が聞こえた。
誰だ?私がケモノにトドメを刺そうという大事なときに?!
その靴音の主は、犬の前まで来ると、まるで庇うように立ちはだかった。
女だ…平民の癖に副総代に指定された女だ。
まさか、貴族の私の邪魔をするというのか?
副総代に指定されたからって調子に乗っているかもしれん。
コイツ、貴族の怖さを知らんのか?