雨の降る頃
雨が窓ガラスを打ち付けている。
晴天の霹靂。
まさに鬼の霍乱。
とにかく一寸先も見えない豪雨です。
外は黒雲が空に蓋をして暗く、時々稲光りが差すのが見え、空はゴロゴロと鳴っていた。
窓ガラスが雨に濡れて、外の様子は見えない。
窓際の座席に座っているためか、雨粒が打ち付ける音がヤケにリアルに聞こえてくる。
僕、授業中だけどサボっているわけじゃないよ。
只今、教壇付近に立ち竦んでいる生徒が、皆から糾弾されているのだ。
先程、バタバタと足音が聞こえ、教鞭をとっていた教官に近い前の扉から、遅れて入ってきた生徒がいた。
当然、皆の注目を浴びた。
直ぐに座れば良いものを、アワアワと慌てて、その場で立ち往生。
見れば、初日にウルフェンに絡まれていた犬族の小さな子です。
きっと寝坊したのだろう。
僕も、連日の詰め込み授業と雑用の多さに疲弊して、同室のアリス達に起こされ、今日、事なきを得た。
疲労のピークで、まだ眠いです。
因みにペンペン様とシロちゃんは、その時、まだ寝ていた。
きっと満足するまで寝て、遅く起きたら食堂に向かうのであろう。
最近では、食堂のおばちゃんと仲が良いらしい。
あの子と、同室の人は起こさなかったのだろうか?
半分寝ている頭脳でムニャムニャ思考を漂わせていたら、おもむろに糾弾が始まったのだ。
最初に言葉を発したのは、本来の士官学校からの参入組の貴族の子息達だった。
貴族の高慢な言い方で子爵の子息が座席を立ち、指先を、あの子に突きつけて言い放つ。
「なんて、体たらくだ、だから獣人風情が映えあるギルドのレッドに昇格するなど私は反対だったんだ!遅刻して来て詫びもいれず、授業を中断させて、不遜にも程がある。荷物をまとめて今直ぐに帰れ!」
その言葉に、立ち往生していた犬族の獣人の子の顔色は青くなり、教科書をギュッと抱えて縮こまった。
貴族の言葉に端を発して、次から次へと、主に参入組の貴族の子女達から非難の声が上がった。
まるで溜まった鬱憤を晴らすかのように…。
僕は、窓に打ち付ける雨粒が窓ガラスに流れ落ちていく様子を眺めながら、それを聴いていた。
…一過性の夏の嵐であるから、直ぐに止むだろうな。
…
もっともあの貴族が言う内容にも一理ある。
だとしても大袈裟に騒ぐ話しでなし、当人が謝り、席に着けば終わる話しであると、この時は思っていた。
だが、話しは終わらずに、状況は次々と非難から糾弾する語調に変わり、終わりそうにない。
教壇に顔を向ければ、教官は隅に寄って、その様子を興味深そうに観ているだけで、止める様子はなかった。
…